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日雇いバイトで月50万を稼ぎ、800万円貯金する日雇いのプロの立ち回りとは?

日雇いのプロは「数時間先の未来」を見ている

日雇いバイト「日雇いのプロ」の彼らに対して、我々のような求人サイトから流れ着いた日雇い作業員たちの志は海よりも低い。重いものを運ぶ、小道具を取りに行く、脚立を押さえる。どれも欠かせない必要な人員ではあるが、正直悪意がなければ誰がやっても同じだ。金がなくなったから仕方なくやる人間、その日の酒を買うために働く人間、人と関わりたくない予備校生。  彼らのほとんどが現場仕事を軽視し、自分がこの中で一番賢いとでも言わんばかりの態度で「いかにサボるか」なんて話ばかりをしている。当初は僕もこのタイプだったが、思い返すと顔から火が出るほど滑稽で恥ずかしい。  そんな掃き溜めの中で、粛々と日雇い作業員としての立ち回りを極めし者は一味違う。常にその作業が最短で終わるように作業工程も完璧、質問してみるとわかるが、彼らは「今」ではなく「数時間後の未来」を見ている。  僕がよく行く現場には「岩崎」という男がいた。同じ派遣会社から現場に派遣されているので何度も現場で被っていて、髭の多い大男だった。髭というよりbeardと言った方が合っていただろう。当時の僕はかなり失礼に他人との距離を詰めるタイプだったので、その容貌から彼を「山のフドウ」と呼び、事あるごとに話しかけていた。  この男を逃してはならない。後に派遣アルバイトで生計を立てる未来の自分の血が呼応した。最初の方こそ煙たがられていたものの、「知らん他のヤツと揉めたくない」という守りの姿勢が逆にフドウの弱点となり、5回目くらいの現場で彼も僕と仲良くならざるをえなくなっていた。  フドウと会話していて衝撃を受けたことがある。まず、彼の月収は約50万円だということだった。僕と同じように派遣の仕事をしているならば、1日に稼げる金額はせいぜい1万5,000円がいいところだ。工事現場の時給は約1,400円。10時間以上働いたとして交通費込みでようやく届く。毎日働いていても50万円にはギリギリ届かない。しかもフドウは火曜日を固定休として週休1日を実現している。月に4回訪れる休みに全力を注いで遊び倒すらしい。さらに当時32歳だったフドウはこの時点ですでに800万円の貯金があった。月に4回の休みでも金は使いきれないので自動的に毎月10万円以上貯まるというのだ。 「この生活は今までで一番ハマっている。体が使い物にならなくなるまでこうして働くと思う」  今になってみると理解できる。フドウもわざわざ競争するのが嫌だったのだ。きっとこの時点で自分にとっての幸福を見つけていた。まだ20代前半だった僕は、 「30にもなって派遣のバイトばかり。悪いけど人生の反面教師にさせてもらうぜ」  と見下していた。  思えば、我関せずと自分のしたい生活を素直に「一番良し」と受け入れるためには、他人に対する漠然とした劣等感や無駄な競争意識を全て排さなければならないので、フドウは32歳にしてもう成功していたのかもしれない。僕は今でも少し悩んでいる。自分は今の生活が一番ハマっていると思うか? という問いに対して迷いがある。
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日雇いで800万円の貯金を生み出した人間の秘訣
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