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「嫌なことからは逃げる」が、心にとって正しい/プロ奢ラレヤー×臨床心理士

ユニークさを求められてうつ病になるアメリカ、皆と同じことを求められてうつ病になる日本

プロ奢 単純に20年前だと「アメリカ行ったよ」っていう情報も少ないから、不安ですよね。今たとえば僕がちょっとチェコ行くか、と思ったらツイッター検索すれば「電車はこう乗る」とか「ここが穴場」とか、今の情報も昔行ったことある人の情報も無限に出てくるので、そこに身構える必要もない時代になったと思います。逆に調べると楽しむ要素が減るぐらい情報が出てくるんで、それはそれでつまんねーなーとは思うけど。 向後 僕なんか何も調べられなかったから、最初はまったく予想と違いましたね。サンフランシスコの大学でもさすがに日本人いるだろうなんて思ってたら僕の行ったコースには誰もいなかった(笑)。 プロ奢 アメリカの患者と日本の患者ってなんか違うんですか? 向後 基本的には同じですけど、アメリカの場合は「ユニークであれ」という空気が強い。意見がなくても意見を言わなくちゃならない。だからそれがしんどくなってしまう人は多いですね。つまらない会議でも何かしら意見を言わないといけないのがプレッシャーになって鬱になる。日本は逆で「みんなと同じであれ」というプレッシャーがあるけど。 プロ奢 それだとアメリカの方が辛いっすね。だって人間なんて大概そんなユニークじゃないんだもん。8割ぐらいは本質的には大差ないじゃないですか。同じ学校で同じ会社でって似たような環境でいたらそりゃ互いに近づいていくわけで、みんな静かにしようとか同じことをしようっていう日本のがマシ。 向後 アメリカ人はよく言うよ、「いいよね、日本は会議で発言しなくてもいいんだから」って(笑) プロ奢 大人しくしてればそこそこの点が取れるって意味では、日本は楽ですね。なんか違うことしたり、でかいこと言えば叩かれるし。

「~であるべき」に毒されている

向後 そうですね。日本はいつからかわからないけど「~であるべき」に毒されている気がする。しがみついてるんでしょうね、これが正しいんだ、っていう概念に。違う価値観に寛容になれないのは、どこかで俺の人生は間違っていなかったんだって思い込みたいからじゃないかな。否定されるのが怖いんでしょうね。 プロ奢 僕が本の中で言いたいのは、極端な話「別にブサイクでもいいんじゃね?」ってことなんですよ。だから「いや、かっこよくあるべき」っていう人には僕の話は響かない。いろいろなところで言ってるけど、例えば日本でブサイクとされていても他の国に行けばめっちゃモテるかもしれない。 どうしてもモテたかったら国を変えるとか「ブサイク」なままモテる方法だってあるし、そもそも「モテ」さえ諦めれば別にいいわけだし。でもみんな本質的に備わってる変えようのないものを、今の環境のままで変えようとするから生きづらくなる。 向後 プロ奢さんのように、ありのままで生きられるのが一番だよねえ。 <取材・文/片岡あけの 安(本誌編集部)> 【向後善之】 臨床心理士。石油会社での会社員生活の後、渡米しCIIS(カリフォルニア統合学大学院)で統合カウンセリングを専攻。サンフランシスコ市営のRAMS(Richmond Area Multi-Services)他でカウンセラーとして働く。著書に『自分をドンドン傷つける「心のクセ」は捨てられる!』(すばる舎)、『人間関係のレッスン』(講談社現代新書)、『カウンセラーへの長い旅―四十歳からのアメリカ留学』(コスモスライブラリー)他。共著に『仏教心理学キーワード事典』(春秋社)。
本名、中島太一。23歳。「他人のカネで生きていく」をモットーにツイッターを介して出会ったさまざまな人に「奢られる」という活動をし、現在フォロワー約9.8万人。奢ってくれた人々との邂逅を綴った「奢ログ」を含む日々の考察を有料note「プロ奢ラレヤーのツイッターでは言えない話。」として配信中。著書『嫌なこと、全部やめても生きられる』(扶桑社刊)、『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』(祥伝社)。
嫌なこと、全部やめても生きられる

「逃げたら負け」と思っている人々へ。"目からウロコの意識低すぎ実践哲学"
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