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<純烈物語>夫婦で応援してもらえたら……小田井涼平がコロナ禍で掴んだもの<第69回>

「夫婦でイチャイチャしている画を…」と言われ

 自宅や自分たちの日常を公開するのは、ある意味プライベートの切り売りだ。抵抗を覚える芸能人もいるだろう。小田井自身も、そこはなんでもかんでも応じるのではなく、番組側のオーダーを一つひとつ吟味するのを心がけた。  ある番組からは「ご夫婦がイチャイチャしている画を撮りたいです」と言われたがNGを出した。普通に仲睦まじさが伝わればいいが、それを過剰にやるとファンは見たくないと思うはず。  純烈ではなく、LiLiCoとの別ユニットとしての仕事であっても、小田井の頭の中には常に純子さんたちの気持ちがインプットされている。そして、その意図を説明すればテレビ側もちゃんと理解してくれる。  また、逆に「仲睦まじくは見えていますけどじっさいはこうなんですよとか、このコロナ禍で時間ができて生じたお互いへの不満や不安があったら話してください」というリクエストも断った。それこそ「誰が得すんねん」というやつだったからだ。  そういったオーダーが出るのも、小田井はわかっている。制作サイドも自粛、自粛でやれることがなく、何をどうやったらいいのかといろいろなことを試行錯誤し、その上でなんとか一本の番組を作ろうとしているのが実情だった。  その分、オファーが来たからといって無条件で受けるわけにはいかないと思った。もちろんこの現状において仕事の声がかかるのはありがたい。  だからといって、結果的に誰かのマイナスになることならば、それはやるべきでない。そうした見極めが、コロナ禍の中でできるようになった。 「純烈を応援してくれるファンの人たちのことを考えたら、本来ならば夫婦生活を見せるのはやらない方がいいと思うんです。僕の場合は一般の女性じゃないから、あの人が小田井涼平の奥さんとハッキリわかる。そうすると想像や妄想で具体的に見えてしまう分、嫌な人は嫌になるでしょう。でも、いくら隠したところで結婚している事実は変わらないんだから、それならば出ることによって夫婦込みで応援してくれたらいいなと思うんです。  ファンの人たちにも家庭があって、家に帰れば旦那がいて子どもがいてっていうことじゃないですか。あなたたちと同じ生活が僕にもありますよというのを伝えたかったんですね。それも、ネガティブじゃない気持ちになっていただきたい。だから僕らを見て、ウチの夫婦も仲よくしようとなってほしいんです。『小田井さんとLiLiCoさんを見て、こうなりたいと思いました』というコメントが、一つでもあれば嬉しいなというノリですね」

小田井・LiLiCoの夫婦像

 結婚以来、小田井は夫婦に関する話を山ほど聞かれ、そのつど真摯に語ってきた。だが、このようにユニットとしての意図についてはあまり声高にアナウンスしてこなかった。  それは「俺はこういう気持ちでやってんねん」というのを言いすぎると、思いの価値が下がると考えたからだ。言葉にするほど、物事は陳腐になってしまう。そこに気づかずなんでも答えを明かすと、もうこれ以上は理解が膨らまない。  芸能界の人間としての活動が、純烈単位ではできなくなった時、幸いにして小田井にはLiLiCoというパートナーがいた。そのフィールドに足を踏み入れたからには、2人で何ができるかを思考する。それも、コロナ禍の中で生まれた新たなる形の一つだった。  やるからには、そこで頑張ろうと思うのがこの夫婦の姿勢である。日常を切り売りにするからといってただリモートの前でダベって終わりにする2人ではない。限られた環境の中でエンターテインメントに仕上げようと、どちらかが口にするまでもなく共通認識でその向こう側にいる視聴者の前に立つ。 「LiLiCoに関していえば、あそこまでテレビに出る必要はないんですよ。今頑張っている仕事だけでまわしていけるし、どちらかというと僕のために一緒に出てくれている。だけどそれはたぶん、世の中には伝わっていないし、LiLiCo自身はすごく実感しているんだと思います。別に私は出しゃばって、なんでもかんでも旦那にくっついているわけじゃないっていうね。本人は言わないけれど。  それが人によってはなんで純烈なのにLiLiCoが出てくるねんってなる。でもウチの奥さんはそうじゃなくて『私が出ることでこの番組からオファーをもらえている』のも当然あるんですよね。純烈をやっている時に夫婦というものを手に入れたんですけど、こうなってみて改めて結婚しててよかったなと思いますよ。もちろんそれは仕事に限らずね。それがなかなか理解されない部分でもあるんですけど」  他者には伝わらなくとも概念的なものではなく実体験として夫婦による支え合いが成立しているLiLiCoとのユニット。ウェブニュース等では語られぬ夫・小田井涼平の真意をノドに通した今、あなたの目に夫妻の関係性はどう映っているだろうか。 撮影/鈴木健txt.
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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