お金

借金500万円男、ジャパンカップ「魂の3連単」2点買いの結末は

借りた5万円なのに惜しくなってくる

 馬がゲートに入れられていくのを見て緊張が高まってくる。借りた5万円なのに惜しい気持ちになってくる。令和に入って1年半、競馬でいい思いはしてこなかった。負ける未来しか想像できない。賭ける前はなんともなかったのに、レース直前で「やっぱなしで」と置いた5万円を取り上げたい気持ちになってきた。だけどもう5万はJRAに吸い込まれたし、そもそも最初から僕のものでもない。  出走直前に暴れた馬、ウェイトゥパリスがデアリングタクトのすぐ近くだったのを見て拳を握った。競馬を買う人間は、出走直前に一番性格が悪くなる。あれだけ青春時代に体育祭で言われてきたスポーツマンシップも、正々堂々という言葉さえもすっかり忘れていた。買った馬さえ勝てばいい……乱れたまえ、デアリングタクト……。  そうしているうちに、いつの間にか馬たちが走り出していた。ヨーイドンはほとんどない。時間も結果も待っちゃくれない。  馬群の中からアーモンドアイとカレンブーケドールを探していると、頭ひとつ抜けて先を行く馬がいた。 「キセキだ……」  担当が呟く。 「キセキが前に出た時はもう、スゲーんスよ……」  スゲーのか。キセキは。  それ以上会話はなかった。あっけなく負けが確定した。こうなっては仕方がない。画面の中では買っていないキセキが、一頭だけで自由に馬場を駆け回っていた。  何度も見た光景。眼中になかった馬が追い抜けないくらい先を行ってしまうこの展開。僕は少し浮いていた腰を落とし、明日のことを考えていた。  しかし、最後の直線に入ると、キセキと後ろの馬群の距離が少し縮んでいた。馬群からアーモンドアイとコントレイルが飛び出る。それを追うカレンブーケドール。  2,400mは思ったよりも長くて、僕が思っていたよりもゴールテープはずっと先にあった。もう馬券のことはあんまり考えてなかったので、興奮が追いつかなかったが、このまま3頭がキセキを抜けば40万になる。  キセキを追い抜かした瞬間、フワッとした非現実感に包まれた。大金が手に入った瞬間によくある感覚だった。喜びの感情は怒りや悲しみよりも遅くやってくる。  アーモンドアイ、コントレイルの2頭が明らかにゴールしたあと、カレンブーケドール、デアリングタクト、グローリーヴェイズの3頭がほぼ同時にゴールを横切った。ゴール寸前で先行していたように見えたのは、カレンブーケドール。
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歓喜
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フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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