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大麻草をアパートで栽培した男は「成長を見て感動した」と話した<薬物裁判556日傍聴記>

「アパートで育つ大麻を見て感動していた」

 被告に反省を促すというより、被告が真に反省しているのだと演出するかのような質問です。これが検察の質問になると、まただいぶ矛先が変わります。 検察官「それでは質問をします。まず、井上さんが大麻の栽培をしているのを知ったのはいつですか?」 被告人「1月の初めです」 (中略) 検察官「1月以前、大麻の栽培に関して、井上さんとは、どんなことを話していたんですか?」 被告人「規模をデカくしたいということを聞いていました」 検察官「あなたが栽培に関わることによって、あなたにはどんなメリットがあったんですか?」 被告人「その大麻を吸えるっていうメリットがあったと思います」 検察官「あなた自身も吸おうと思っていたんですね?」 被告人「やめたっていうのは本人達には言っていなかったので、吸えると思っていたと思います」 検察官「あなた自身は吸うつもりは一切なかったと?」 被告人「なかったです」 検察官「そうすると、あなた自身の認識として、メリットは何があったんですか?」 被告人「正直、捕まるまでアパートに通っていたときに成長過程をみて感動していました。毎日行くたびに成長していることが」 検察官「あなたは大麻栽培用の照明器具を購入していましたよね? 購入した時期はいつですかね?」 被告人「2月だと思います」 検察官「どのような方法で購入したのですか?」 被告人「電話で購入しました」 検察官「お金は井上さんからもらわなかったんですか?」 被告人「もらっていません」 検察官「自分のお金を先に出して購入する必要はなかったんじゃないですか?」 被告人「はい。そうですね」 検察官「大麻を栽培していた野菊荘201号室にはあなたと井上さん以外にも出入りはありましたよね? 誰が出入りしていましたか?」 被告人「春日と馬淵と山木と江口です」 検察官「いま名前を挙げた4人は、どうして野菊荘に行くことになったんですか?」 被告人「みんな僕が連れて行ってしまいました」 検察官「あなたどうして連れて行ってしまったんですか?」 被告人「4人とも大麻を吸っていて興味があったんで、連れて行ってしまいました」 検察官「あなたは4人に対して、大麻を吸うよう勧めたことはありますか?」 被告人「馬淵に対しては勧めたことがあります」 検察官「馬淵だけですか?」 被告人「はい」

「植物の成長を見ていただけで吸うつもりはなかった」

 検察の被告人質問はこれでおよそ終わりです。前回は主犯と見られる(栽培していた部屋の賃貸契約主)井上功一の法廷劇を紹介しましたが、井上は随分苦しい弁明に追われていました。「仕事の資材置き場として北村にアパートの鍵の場所を教えた。大麻を育成していたと話したわけではないが、北村もわかっていたと思う」と言ったうえで「北村がそこで何をしていたかは知らない」と話します。    一方の北村は井上と共謀したことを認めますが、「栽培に関わるメリットは大麻を吸えることだが、自分は吸うつもりはなかった」と答える。ただ植物の成長を見るのが嬉しかったから関与したというのです。検察官の「子供の出産を控えているのに(犯罪とわかって吸いもしない大麻を育てる理由は)?」という疑問はもっともでしょう。  被告人がそれについて納得のいく答弁をせずとも、初犯での大麻取締法違反の量刑は決まっており、北村もその例に漏れません。 裁判官「被告人、証言台に立ってください。主文、被告人を懲役3年に処する、この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する(後略)」              ***  主犯の井上の求刑が懲役3年執行猶予4年だったのに比べ、北村は5年。交通違反分が加算されているのかもしれない。余談だが弁護人に「自発的に毎日反省文を書いているそうだが今日も(裁判後)書くのか?」と聞かれ、「すでに書いてきた」と答えた北村は少しドヤ顔だったそうだ。 <取材・文/斉藤総一 構成/山田文大 イラスト/西舘亜矢子>自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す
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斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中。
note(https://note.com/so1saito/n/nfc05ea156dd9
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