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国が紹介する日給8000円のゴミ拾い。路上から見上げる“正しい市民”への葛藤

気まぐれな大衆の顔をうかがう

 朝の5時半に家を出て職安に向かう。バスで数十分揺られた場所で言われるままにゴミを拾い、終わったらまたバスで帰る。結構ちゃんと掃除をするから、トラックの運転手が捨てた弁当の袋なんかも回収する。  街でポイ捨てをする時は、植え込みの手前にわかりやすく捨てて欲しい。あと分別をして拾ってるから、缶は弁当の袋と別にして投げ捨ててくれ。  ニヤニヤしながらゴミをこちらに投げてくる人もいる。 「拾ってやったぞ」 と言いながら自分が飲んだ缶を足元に転がす。どついてやりたい気持ちになるが、ヘルメットとチョッキを着てるので我慢する。  大衆は気まぐれだ。 「今日は底辺に優しくしてやろうかしら」 と思えばホームレスや日雇い労働者の人権を謳い、テレビで税金泥棒と報じられれば、 「そんな奴ら生きてても意味がない」 と電話や街中で大騒ぎする。施すも施さないも、許すも許さないも「正しい市民」が全権を握っているようで、それを見る度にこちら側は特に期待もしない。その気まぐれの振れ幅が慈愛に傾いた時だけ、もらえるものはもらっておこうと思うだけだ。  もちろん本気で助けてやろうという人たちもいるので一概には言えないが、見てて思うのは大半が気持ちよく正義の槌を叩くために周りの様子を伺っているだけだ。

カイジの地下帝国

 帰りのバスの中では何となく緊張がほぐれ、若い僕も段々と受け入れられていき、競馬の話なんかもする。ここでの共通言語のうちの一つだ。年代が離れている僕はこの話以外ついていけない。  正直この仕事だけではジリ貧だ。突然失職して年金で税金を賄えない人もいる。だがそれぞれが1人だ。  降りる時に「金を渡す人」が現れて、8,000円と小銭がいくらか入った封筒を渡される。  ああ、ちゃんとこうして、少ないとはいえ復活のチャンスが転がっているんだ。日本に生まれて良かった。  そう思った。  バスから降りて解散する。目の前に、街の風景に不釣り合いなくらい綺麗で大きなパチンコ屋が口を開けていた。カイジの地下帝国みたいだ。大槻班長の巧みな戦略を思い出す。  この街の人や経済は確かに回っている。だけど僕は許さない。 「あそこは出るから」 とバスの中で教えてくれた人と、打つ気もなかったのに5,000円も飲み込んだ“大海物語4”を……。〈文/犬〉
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩
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