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Wi-Fiにも魂が宿る?調子が悪くなったときに対処した結果

すべてのモノには魂が宿っている

 もしかすると、この家のWi-Fiは、弱っているのかもしれない。  回線自体が死んでいるわけではない。でも思えば僕は、これまで自分のWi-Fiに何かしてあげたことがなかった。取っ替え引っ替え新しい回線に乗り換え、名前も知らないまま次の契約をし続けた。そんな僕に愛想を尽かしてしまったのかもしれない。  バカな話だと思うだろう。だが、全てのものには魂が宿っている。トイレにも神様はいるし、市松人形だって髪が伸びる。Wi-Fiが自我を持って回線が弱くなったとしても、もしかしたらそういうことがあるのかもしれない。  幼稚園くらいの頃だったろうか。僕はポケモンの指人形で遊ぶのが趣味だった。  寝る前に左手と右手にお気に入りのポケモンを握らせ、互いの必殺技を叫んで戦わせていたが、どちらにも愛着があったので決着がつくことはなく、気づいたら寝てしまっていた。優しい子供だった。  欲しいものがあれば大概買ってもらえた僕の将来を案じてか、母は「物を大切にするように」と口酸っぱく言い聞かせていた。  ある日、エレブーという人型のポケモンの指人形を運悪くベッドの下に落としてしまった。家族全員が寝れるほど大きなベッドは大人2人がかりでも動かすことは難しく、泣く泣くエレブーを諦めざるを得なかったが、その日から数日間、母が寝る前に必ず、 「エレブーが一人ぼっちで泣いてるよ……」  と泣き顔で声をかけてきた。一人ぼっちになってしまったエレブーに責任を感じて僕も泣いた。これが強いトラウマとなり、僕は心のどこかで「物に宿っている魂の存在」を忘れられなくなり、母の願い通り今でも物が捨てられない大人へと成長した。エレブーは今もきっと20年分の埃の下で泣いている。  僕はWi-Fiをエレブーの二の舞にはしてやりたくなかった。今日だけは、こいつのためなら出来る限りのことはやってやろう。完全に死んでしまう前に。

ネットの知識

 インターネットで聞いたり調べたりしたところ、どうやらルーターの周りにアルミホイルを設置するといいようだったので、すぐに近所のスーパーで買ってきた。そういえば僕のルーターは服すら着ていない。恥ずかしかっただろう。  アルミホイルで周りを囲んだが、それでも回線は強くならなかった。こんなことだけでWi-Fiの機嫌が直るものか。イライラしてはいけない。  ケーブルを一度全部ほどき、クルクルしてる部分を解消して繋ぎ直した。ずっと窮屈だっただろう。これからは伸び伸びと生きていくといい。  回線の調子は戻らなかった。この日は一度諦め、明日また考えよう。そうして一度寝た。Wi-Fiに負担をかけないようにゲームもパソコンも携帯も電源を落とした。
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Wi-Fiの死
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