ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。
「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は35回。
今回は、自室のWi-Fiの調子が悪くなったときのお話です。

犬のTwitterプロフィール
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営業のお兄さんはいつもこう言う
世の中は知らない事ばかりだった。実態のないインターネットを使うためには何かしらの契約が必要で、電気を使うためも金を払ったりしなくてはならないらしい。
ことなかれ主義で金に無頓着な僕は、半年に一回ほど来る、インターネット回線の営業のお兄さんに言われるがままに次々と新しいインターネット回線の契約を繰り返してきた。今は毎月6,000円くらい払っているらしく、これが高いんだか安いんだかわからない。
でもきっと良いものだろう。営業のお兄さんたちはいつもそう言ってくれる。最後に契約したのは8月くらいだった。暑いなか、スーツでインターホンを押すお兄さんを冷房の下に入れてやりたくて、別に興味もなかったが部屋の中に入れた。携帯がどうこう、ソフトバンクならどうこう、プロバイダがどうこう。何一つわからなかったが、とりあえず今より安くなるなら何でもいいと返して引き落とし用のキャッシュカードを渡した。
今、僕はどこの回線でインターネットを使っているのかすらわからない。ギャンブルの種銭を手に入れるために金の作り方は覚えたものの、出ていく金を減らす方法には全く詳しくない。これはギャンブル依存症や多重債務者がよく陥る現象だと思う。
そのインターネットの回線の調子が、10月頃からずっと悪い。それどころか、1月に入ってさらに調子が悪くなっている。使えないわけではない。ただ、動画を見たりゲームをしたりするときの反応がとにかく悪いのだ。もはや「貧乏暇なし」ではなくなった現代の貧乏人としては、ネットがなくなっては家でできることがなくなってしまう。外に飲みに行く金も、遊びに行く金も無い。ネットがなければ、仕事の時間までただヤニで黄ばんだ天井を見上げることしかできない。
ネットが生活の中でも非常に大切なものだった事にようやく気づき始めた。人間とは罪深い生き物で、失って初めて「大切」という感情が芽生える。
「通信速度が遅過ぎて対戦できません」
という文字を睨みつけながら、何とかして回線を強くする方法を考えた。
だが、高い位置に置いてみても、電源を入れ直しても、回線は弱いままだった。もう普通にGoogle検索を開くだけでも時間がかかる。止まっているわけではない。繋がりはするが、ただただ貧弱だった。