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<純烈物語>応援してくれてきた人たちとともに死なない選択をする。リーダー酒井が表した「みんなを守る」覚悟<第83回>

「紅白に出られなかったらどうしよう……毎年毎年、年が明けるとネガティブになる」

 プロデューサーとして冷静でいなければならない立場も、しゃべりの枠に関してはそこから解放される。ノリノリで話す酒井の笑顔は、それまでの溜まりに溜まった負の反動に映った。だからこそ、メンタルがプラスに転換された勢いでこのような思いをしっかりと自分の言葉で伝えられたのだろう。 「毎年、年が明けるとネガティブになるんよ。また365日闘うのか、紅白に出られなかったらどうしようって。出られなかったら、皆さんに何を語りかけるか、もう今から考えてんねん。純烈は、何が起こるかわからん。どういう運命が待っているか……でもそれが楽しみ。みんなの命を守りながら、こうやって歌わせていただいている。  我慢は去年、十分やったわ。2020年は正直、事なかれの道を選んだけど、純烈を通じて商売して生きている人たちがたくさんいる。その人たちはどうする? だからね、どこの誰かもわからんやつらのネットの書き込みに左右されてたまるか! 本気で生きていけば、伝わる人には伝わる」  奇しくもこの日、2度目の緊急事態宣言が翌8日より発令されると報じられた。ガイダンスに沿って開催しても「こんな時にコンサートをやるなんて……」という声は出る。  ようやく純烈と再会できたのに、ライブに足を運んだことが悪のように受け取られるから、ツイートで喜びを表すのもはばかられてしまう。そんなファンにとって、酒井の覚悟は心を支えるに値するものとなったはずだ。

ライブ再開は、世間の目もあるし「やっぱり怖さはある」

「やっぱり怖さはあります。世の中から叩かれるし、まったく純烈に興味がなくてもなんでやるんだという人たちが一定数出てくるからね。でも僕は昭和から芸能界にいるんで、叩かれてナンボなんですよ。いわれのない叩きで名があがるならオイシイとさえ思っている。俺らちゃんとやっているから、わかってくれる人はわかっている。  ただ、仲間だったりスタッフだったり家族だったり、ファンの人たちだったりに何かあってはならないので、それは生きている時点でのリスクですよ。リスク覚悟で進んでいくし、進まない方が死んじゃうから。みんな死んじゃうから。純烈だけじゃなくていろんな人が死んじゃうんで、見捨てるわけにはいかない。そういう人たちにここまで押し上げてもらったのだから、応援してくれてきた人たちとともに死なない選択をしないと」  事実、有観客ライブを再開したあとも延期、中止の公演は出ている。やみくもに強行突破するのではなく、そのつど会場側や関連各所と話し合い、決断する姿勢を崩さない。  やってもやらなくてもリスクが生じる中で、ファンを含めたすべての人たちを守る。酒井一圭はそこまで考えて、覚悟を決めている。 「皆さんの前で、2021年もよろしくお願いしますと言えることが嬉しいです。普通が普通のことじゃなかったことを噛み締めながらの、今日の時間となりました。今年は一回でも多く皆さんとこういう時間を過ごせるようにと思っております」(後上) 「久しぶりに会って、元気そうな顔が見られて嬉しかったです。涙を流されている方もいたりで、僕らもそういう気持ちで一人でも多くの方に喜んでもらおうとこのコンサートが始まったわけですけど、制限下でのツアーになりますが、今年は全国の皆さんに会いにいけるよう、皆さん体調だけは気をつけて遊びに来ていただければと思います」(白川)  ライブができなかった時期、後上は普通でなくなってしまった日常と向き合った。白川は「おばちゃんたちの顔が見たいですよ……」と寂しげにうつむいた。  ライブ中、ツッコミだけでなくボケの方もサク裂させては笑いを誘っていた小田井も、締めのMCでは一転し真顔に。自身の体験談を踏まえて観客に呼びかける。 「今日も皆さんにご協力いただいた中で、一つひとつの積み重ねで一つひとつやっていくしかないんだなと思いました。スタッフさんもリスクを負ってやっています。  実は奥さん(LiLiCo)が仕事の都合で一週間に1度はPCR検査をしなければならなくなったんです。万が一陽性反応が出た場合、僕も可能性が出てくるということでこの2、3週はピリピリしていました。でも、検査を受けるのは正しいこと。周りに伝わらない努力でも必要です。そういう状況下で、楽しんでもらえることを考えていきます」  それぞれが顔と顔を合わせた上で伝えたかった思いを、自分の言葉で客席の一人ひとりに投げた。みんな、会話に飢えていた。  たとえ声は一方向でも、返答は万雷の拍手となって4人に届いた。純烈とそのファンが、純烈とそのファンであり続けるために呼びかけることを、酒井はステージを去る直前まで忘れなかった。 「ここからまた新しく始めていこうじゃないかという気になれました。ありがとう。規制退場のほう、ご協力お願いします!」 撮影/渡辺秀之
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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