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拡散する陰謀論、それを後押しするインターネット

裏側の真実には、粘り強く接すること

 朝日新聞の「『陰謀論』拡散、日本でもあった」という記事はとても面白いものでした。  フリーメーソンとか宇宙人の陰謀、月の裏側の基地でお馴染みの月刊誌「ムー」の三上丈晴編集長は「国内で一般の人が、陰謀論を口にするようになったのは最近のことのように思う」と答えています。  やっぱり、インターネットが陰謀論を普及させたのは間違いないでしょう。  スマホは、自意識と承認欲求の拡大装置で、こんなにわけの分からない時代に、なにも理解しないまま、何も言えない自分をみんな許しがたいと感じるんだと思います。  で、高知さんのツイッターのように「表の勉強」はとても大変なんだけど、「裏側の真実」は簡単だということですね。  この記事で面白かったのは、「『ムー』ではまだ、トランプ支持者と重なり合う陰謀論集団『Qアノン』を本格的に特集はしていない。『検証するとすぐにおかしいと分かる事柄が組み合わさっていて、ムー読者からするとまだまだ甘いと思うのでは。日本で盛り上がっている人は、陰謀論への免疫が足りないような気がする』と話す」  という部分です。さすが、陰謀論の老舗から見ると、『Qアノン』はアマチュアの陰謀論だということですね。Qアノンの陰謀論の前身と見なされているピザゲート事件では、熱心な民主党支持者が経営するピザ屋の地下で、人身売買や幼児売春が行われていると多くの人が信じて、銃撃事件まで起こりましたが、ピザ屋には地下室はなかったという簡単すぎるオチですからね。

陰謀論が台頭している二つの要因

 政治思想史が専門の片山杜秀・慶応大教授は陰謀論が台頭している要因を二つあげます。  ひとつは、インターネットの登場や格差の拡大で情報が共有されづらくなった「マスメディアの衰退」です。日本では、マスコミが、ただ政府広報になってしまって、人々にとって信用できないものになっていったのも「マスコミの衰退」ですね。  もうひとつは、環境問題や原発、新型コロナウイルスなど政治や社会の課題が、専門家でも領域が異なると理解できなくなるほどになった「科学技術の高度化」だとします。  陰謀論が宗教論争になってしまうとじつにやっかいなのですが、それでも、粘り強く、ファクトチェックしたサイトのように接するしかないだろうと思います。  あきらめたらそこで試合終了だと、スラムダンクの安西先生の言葉を思い出すのです。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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