ライフ

真冬の深夜に酔って外で眠り、終電をなくしてしまった50代男性の奇行

雄叫び

「小便がしてえ、おああ!」  尾崎は最後の雄叫びを発したあと、動かなくなった。時間はまだ4時。この辺鄙な地からの始発は5時半。あと1時間半もある。籠城戦が始まった。携帯の充電を確認し、いつでも救急車を呼べるようにした。  夜勤をよくやる人間ならわかるだろうが、駅のシャッターは始発の1時間前くらいに開く。これまでは近くの日高屋や牛丼チェーン店、富士そばなんかで時間を潰して始発を待っていたので気にしなかったが、どの店もやっていない今の時期、駅構内だけが「マシ」なエリアだった。  4時半になり、駅のシャッターが開く頃、僕が警備員として働いていた工事現場の仕事が終わった。ぞろぞろと薄着で地下から這い出る作業員を見ながら「羨ましい」と思ったが、一歩も動かなかった警備員がそんな愚痴を言うわけにはいかない。冬の警備員の辛いところだ。本当は手伝って僕も汗を流したかった。

駅が開く

 尾崎のおじさんを置いて始発を待つために駅へと向かった。シャッターが開き、なかにあった自動販売機の明かりが眩しく夜を照らす。  コーンスープでも飲もう。そう思って財布を開いた。小銭が400円あった。  駅員に入場取り消しをしてもらって尾崎の元へと戻る。 「今日、寒かったっすよね」  味噌汁を差し出すと尾崎は僕を見上げて「うん」と言った。ありがとうを言うには体が冷えすぎてしまっていたのだろう。 「駅開いてるんで、もう入れますよ」  見ず知らずのおじさんに優しくした僕は、彼を待たずに駅へと向かう。心なしか足元の冷えがなくなっていたように感じた。いつかブログに書こうという邪な偽善に過ぎなかったかもしれないが、今日はよく寝れそうだと思った。  帰りの電車でなぜか尾崎は僕の向かいの席に座った。お互いの存在に気がついてしまったせいで、電車を降りる20分ほどの間、うっかり目が合うたびに、 「ッス……」 「いやいや……」 みたいな反応をして本当に気まずかった。背中を預かりはしたが、さすがに真正面は恥ずかしい。〈文/犬〉
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩
1
2
3
おすすめ記事