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マスク非着用解雇とホームレス避難所拒否に思う、日本人の“感情のルール”

明確な基準がない“感情のルール”

 で、このマスク非着用の場合です。  契約社員の男性は、顔や手にアトピー性皮膚炎があり、当初は、上司の求めに応じて、肌と接触が少ない口元を覆うタイプのマウスシールドを着けたそうです。  が、その後、上司からマスクの着用を求められたため、2回にわたって「不織布マスクが刺激になる」「マスクをつけた方が皮膚炎の症状が出やすい」とする医師の診断書を会社に提出し、今年1月には「マスク代わりに(顔全体を透明なプラスチックで覆う)大型フェースシールドを着ける」などの代替案を提案したそうです。  最初はマスクじゃなくても、オッケーだったんですね。  で、会社側からは、「職場の安全管理や秩序維持の観点を総合考慮し、就業規則違反にあたる」と通告され、2月で雇用を打ち切られたそうです。  これね、「就業規則」という「成文化」されたルールのように感じますが、じつは「秩序維持」が理由なんですね。 「秩序維持」ってのは、つまり、「世間」の人がどう思うか、です。 「安全管理」については、この男性は、職場では正面と両隣には誰も座らず、飛沫予防のアクリル板も置かれたと主張しています。  これでは、ただちに「危険」だとはなかなか言えないでしょう。 「社会」は「法のルール」ですが、「世間」は「感情のルール」です。つまりは、明確な基準はありません。人が不安だと思ったら、それがルールになります。  それが「同調圧力」の怖さです。

職場という「世間」

 勝手な想像ですが、上司は、最初、問題がないと判断したのではないかと思います。  が、会社という「世間」で、誰かが「どうしてあの人はマスクをしてないんだ?」と不安を語り始めると、それがやがて「世間」のルールになってしまうのです。  もちろん、「感情がルール」と堂々とは言えないので、「就業規則」という言葉を持ち出します。  職場という「世間」と、働く権利という「社会」の対立に、僕には見えるのです。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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