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大麻後進国?日本の現状に首をひねる外国人たち「議論すらされないなんて」

「ハイでまったり」はなぜダメなのか

 「ダメなものはダメ、とにかく禁止!」というスタンスには、エミール・ポンセさん(仮名・32歳)も異を唱えた。 「日本人は『臭い物に蓋をする』のが好きだよね。まず、ハードドラッグとマリファナ(大麻)を同じに考えることがおかしいよ。多くの国じゃ医療用として認められているのに、いい部分と悪い部分を教えないで、とにかくダメって言われることにみんな疑問を感じないの? アルコールですら、酔っ払いが駅や電車で寝ていたり、とても教育が行き届いているとは思えない。頭ごなしにダメって言うんじゃなくて、ちゃんと国民を巻き込んで議論されるべきだと思う」  また、「議論が浅すぎる」というのも共通認識なようだ。エミリア・ニールセンさん(仮名・37歳)は、今回スタートした有識者会議にシンプルな質問を投げかける。 「『法律で決まってるからダメ』っていうなら、その法律の根拠になる部分を納得できる形で国民に示さないといけないと思う。たとえば、『売買は反社会的組織の資金源になる』とか。今の所持はダメだけど、使用は許されているって仕組みを見ても、そこがまるで考えられていないと思います。  使用もダメっていうなら、『家でハイになってまったりする』ことがどうしていけないのか、説明してほしいです。納得のいく説明のしようがないから、多分テキトーな理由で誤魔化すんでしょうけど、それは法治国家のするべきことじゃありません」  一般人にとって大麻使用罪はまるで縁のない話かもしれないが、海外では「根拠も議論もなしに犯罪化するのは危険」という認識が強くあるからだ。このあたりの法律に対する姿勢は、日本人と外国人では大きく異なる。それ故に大麻についての議論や考え方も異なるのだろう。  「薬物に近寄らない」というのは大事なことだが、「一切、考えない」というのは、また別な問題だ。薬物事犯よりも、議論の数が増えていくことに期待したい。

大麻成分の治験が日本でも始まることに……

 とは言え、遅まきながらも日本でも大麻について少しだけ“進歩”があった。4月1日、厚生労働省は大麻を原料にした医薬品について現場での使用を認めるか議論が進める中で、実用化を視野に入れた治験を日本国内で行うか検討を始めたのである。製薬会社の関係者に話を聞いた。 「大麻の成分を使った薬剤は世界中で使われています。てんかん治療薬や癌などの痛みを軽減する薬などがあります。日本は大麻後進国と言われていますが、早くからその効用や市場規模に注目していた日本の製薬会社は多く、大塚製薬は大麻成分を使ったがん疼痛治療剤のアメリカ国内での開発、販売するライセンス契約を2007年にも取っています。もし、治験が解禁されたら、これまで以上に研究開発が進み、医療分野は大きく影響をうけるでしょうね」  この関係者は最後に「治験が解禁されたからといって嗜好目的が同じ土俵で語られるのは別問題」と釘を刺した。ダメ、絶対!からは新しいものは生まれないのかもしれない。 取材・文/林 泰人
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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