闇ワクチンは中国製だけではなく、ロシア製のモノも出回っている。プーチン大統領が接種しないと公言したスプートニクＶだ。 　人間は健康に関わる不安に弱い。だからこそ、そこにつけ込む物販や詐欺は儲かるのだ。トラディショナルで原始的な情弱ビジネスである。 　薄毛や肥満、肌のシミ、弛みなど、外見のコンプレックスを突く商品もよく売れる。 　とは言うものの、ハゲだデブだというコンプレックス相手の商売など可愛いものだろう。 　中には深刻な病に悩む人を食い物にする不届きな連中もいる。余命宣告を受けた末期がん患者をターゲットにしたトンデモ医療と偽特効薬ビジネスだ。 　10年ほど前、タイ北部の街に富裕層の末期がん患者が集まる医院があった。未承認の特効薬を使ったがん治療が受けられるという話に、藁をもすがる思いで多くの末期がん患者が集まった。 　この医院を末期がん患者に紹介していたのは、関西にある漢方薬局店と関東の医療法人である。未承認の治療薬で末期がんが治るとか、最新の免疫療法が受けられるという触れ込みで患者を集めた。 　最後のチャンスと期待して入院した患者が回復することはなかった。治療薬も最新医療も全て嘘だからだ。 　高額な薬代と治療費をむしり取られながら死を待つだけだ。 　患者は末期がんである。やがて死人に口なしとなる。海外を舞台とするのも事実を隠し日本の法から逃れるためだ。 　さて、闇ワクチンだがロシア製のモノは全くの偽物が出回っているらしい。 「中身は生理食塩水だから安心です。薬にはならないけれど毒にもならない」 　私に声をかけてきた医療関係者は悪びれる様子もなくそう言った。