福島を日本のシリコンバレーに!猫組長が描く復興戦略の中身『ネコノミクス宣言 完全版』重版記念
元経済ヤクザ・猫組長氏による国際金融、マネロン、麻薬ビジネス、果ては人身売買など、衝撃の真実が綴られるSPA!連載中の『ネコノミクス宣言』。3月5日(火曜)に発売されて早1ヶ月、ネット書店を中心に好調な売り上げを記録し、見事に重版出来! これを記念して、本書に収録されているエピソードを追加で公開。今回は「福島復興」について、猫組長の思いが綴られる。
(『週刊SPA!』2018年10月23日号掲載)
私と福島の関わりは東日本大震災からである。発生直後は詳細な情報がなく、南相馬にいる身内の安否は不明であった。翌日、数人を現地へ送ったが、道路も通信も寸断され、目的地に到着したのは翌々日だった。現地からの報告と送られてくる画像は、まるで戦場のありさまだ。
この時に役立ったのは、イリジウム衛星を利用した携帯電話とオフロードバイクだ。戦場の市街地と同じである。道路や水道・電気といったインフラは遮断され、食糧や燃料も手に入らない。回収困難な遺体が所々で散見される。
私は阪神大震災を神戸で経験している。だが、東北の被災状況はそれよりも甚大で衝撃的であった。この日からおよそ1年、南相馬から宮城県の石巻市まで、数人をボランティアとして送り続けた。海での遺体捜索、瓦礫の撤去、解体作業といったものから、ローン返済の相談や債務整理の手伝いと、活動の範囲は多岐にわたる。
そして、震災から1年もたつとインフラもほぼ復旧し、被災者の生活も一応の落ち着きを見せた。少なくとも私たちはそう感じていたのだ。
だが、現実はそうではなかった。6年ぶりに南相馬を訪れ、津波で流されたまま放置された車を見た時、私は愕然とした。当初は、須賀川市の渡辺康平市議からの要請で、風評被害の対策を講じるための訪問であった。だが、南相馬の現状を目の当たりにして、私なりの復興を目指してみたいと思った。
復興とは、戦争や災害で機能が低下したインフラや経済を立て直すための、いわば投資である。投資とは、将来投下した資本を回収し、収益を上げられなければ失敗である。それができないのであれば、その復興プロジェクト自体が失敗なのだ。
福島も震災当初は巨大な資本が投下され、復興のための企業進出や事業展開も活発であった。復興予算もふんだんに使われ、世間の注目度も高かった。だが、しばらくすると多くの企業は撤退し、事業も衰退していった。
失敗の原因は大きく分けて2つある。まず、震災直後の感情、特に同情による先走った事業展開が多かったこと。そして、従来通りのありふれた復興プランしかなかったことだ。使い古されたプロジェクトやプランでは、とても復興できる規模ではない。
そのうえ、旧態依然とした復興事業では、補償金や助成金目当てのよそ者が集まり、利権が生まれて復興が遅れる。これからの社会は、テクノロジーの急激な進化で、物質的経済から知識創造経済へ転換してゆく。生産はAIとロボットによって極限まで効率化されるのだ。福島はその最前線を目指した新しい産業とテクノロジーを、復興の主軸にすればいい。
最先端のベンチャー企業はシリコンバレーから生まれる。その理由は、夢のような事業に資金が集まるからだ。
「ロケットで宇宙旅行をする」
こんな事業計画に、日本の金融機関も投資家もカネを出さない。だが、シリコンバレーでは夢のある事業に資金が集まり、やがてそのビジネスは実現する。私の復興プランは、海外から見込みあるベンチャー企業を福島に誘致することだ。
技術とアイデアはあるが資金が足りないベンチャーがいい。最先端の知識を福島に結集させ、日本の若手ベンチャーと競わせる。研究開発とは知とカネの投下である。福島を日本のシリコンバレーにすれば、新しい産業と新しい経済圏ができるはずだ。福島には利用可能な既存のインフラもある。RTF(ロボットテストフィールド)も福島空港もいい。
明日、私は再び福島へ行く。
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