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神足裕司×西原理恵子の名コンビがタッグ『介護の絵本』。著者の想いを聞いた

 今年8月末に発売された『コータリン&サイバラの介護の絵本』(文藝春秋)が話題を呼んでいる。
神足裕司さん

神足裕司さん

 本書は9年前にくも膜下出血に倒れ、重い後遺症から要介護5の認定を受けたコラムニストの神足裕司(こうたり・ゆうじ)さんが日常を綴り、漫画家の西原理恵子さんが絵を担当。介護施設のポータルサイト『みんなの介護』での人気連載をまとめた1冊だ。 介護の絵本

神足×サイバラの名コンビが、四半世紀ぶりに復活

 神足さんと西原さんのコンビといえば、そこそこ年のいった人ならば思い出すのは、間違いなく『恨ミシュラン』だろう。  1993年から『週刊朝日』で連載された「いちどは行きたい恨ミシュラン」は、老舗や話題の名店、トレンドスポットを紹介するいわゆるグルメ企画ではあるのだが……忖度も自粛も遠慮も大人の事情も一切なし。 「史上最強のグルメガイド」の煽りどおり、最強コンビの二人が容赦なく評価し、グルメ度ではなく「恨ミ度」をチェックという異色のものだった。  たとえば、銀座の高級フレンチ店の店内をサイバラさんが「のーぱん喫茶みてえっ」と評せば、神足さんはその料理について「フォアグラのステーキは居酒屋のあん肝並み、コンソメはまるで缶詰。(略)うっとりさせてくれたのは、壜からすくい上げたスプーン二杯のキャビアだけ!」とバッサリ。  また、老舗蕎麦店を訪れた回では、創業100年のその味について西原さんが「シマダヤの流水麺」とぶった斬り、神足さんが「東京の真ん中で、庭の見える和室で、江戸っ子気分のひとときを過ごせたのだからそれでいいーーという気弱な人にとってはお勧め」と皮肉る。 恨ミシュラン 一方で、新宿歌舞伎町の24時間営業チェーン店居酒屋については、「あまえび刺 多少ひからびてはおりますが、いたんでおりません」「まぐろなっとー レートーまぐろの水がそこにたまってます。よく水切りしてからこねて下さい」と散々ながら、朝8時から午後1時まで5時間飲み続け、最後には二人そろって泥酔。 「あらゆる行き場を失った人々の終着駅。外と隔絶された闇の世界。ここにいれば時間が止まり、あり金の続く限り、夢の世界」と結び、恨み度はサイバラさん1点、神足さん0点とまさかの高評価だったりもする(恨ミ度は5点満点で最悪の評価)。 (引用はいずれも、『いちどは行きたい恨ミシュラン(上)』朝日文庫より)  こうした毒舌がウケ、単行本は60万部を超える大ヒット。一方で、お店側は戦々恐々。神足さんとサイバラさんの入店を断る店もあったという。令和の今ではいろいろありえない企画であった。

倒れてから5冊目の本となる『介護の絵本』

 そこから、四半世紀がたち、『介護の絵本』での再タッグ。
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(C)西原理恵子『コータリン&サイバラの介護の絵本』(文藝春秋)より(以下同)

『介護の絵本』は、「いつも誰かの助けを請わなければ生きてもいけない」要介護者となった神足さんが、ケアマネさんのこと、リハビリや車椅子のこと、息子の結婚やハワイ旅行など家族との日々を綴り、サイバラさんが「キレイなコータリン」にツッコミを入れる。そして、ときに、家族の愛に泣かされて怒ったり。 『恨ミシュラン』と味わいは変われども、変わらぬ名コンビぶりを楽しめる一冊だ。  神足さんにとって『介護の絵本』は、倒れてから5冊目の本となる。サイバラさんのツッコミもあって、本書でより強く印象に残るのが、神足さんと家族がこの9年間でこれまでどれほどの決断をしてきたのだろうかということだ。  たとえば、非常時。町内会の役員さんと民生委員の方に「非常時の希望を伺いたい」と聞かれ、妻の明子さんは「両親と娘は避難所に避難。私と夫は自宅が崩壊しないかぎり家にいます」と答えている。 介護の絵本2 多くの人はハザードマップを確認し、避難袋を用意すれば、まぁ、そこそこ準備は完了する。神足家も、「スーツケースに薬やオムツ、アルコール消毒、嚥下しやすい保存食を2~3日分を含む避難袋を用意し、いざという時にはすぐに取り出せるようガレージに置いてある」(明子さん)そうだが、体育館などの避難所で神足さんが過ごすのは現実的には厳しい。  だとしたら、どうするのか? 
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「どこまでやりますか」と聞かれる
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