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不動産業界を知り尽くすTKP河野社長。アフターコロナのオフィス業界を語る

約467億円のリージャス買収で得たモノ

TKP 河野貴輝 馬渕磨理子馬渕:ハイグレードなレンタルオフィス、「リージャス」をコロナ前に買収していましたが、コロナ禍でどのような影響がありますか。 河野:世界No.1のレンタルオフィス事業を展開する「リージャス」の日本法人を2019年4月に約467億円で買収したことは、今となっては、TKPの強みとなっています。 馬渕:2019年頃は、TKPは売上高が約350億円でした。その時に、約467億円のM&Aを成功させるには、並々ならぬものを感じます。 河野:当時、ちょうどレンタルオフィスの企業を買収したいと、水面下で動いていた時期に、リージャスが日本法人を売るという話が伝わってきたので、すぐにロンドンに飛びました。このM&Aを実行したら、TKPは倒産するんじゃないかと思うくらいの大きな買い物でした。 馬渕:リージャス買収の狙いは。 河野:リージャスとTKPは一緒にビジネスができれば、相互送客や仕入れ等のシナジー効果のシナリオを描くことができます。貸会議室に、レンタルオフィスやコワーキングスペースが加わることで、どんな空きスペースでもジグソーパズルのラストピースを埋めるように活用できるわけです。 馬渕:大型M&Aの買収の成功には苦労があったそうですね。 河野:絶対に世界No.1のリージャスとのM&Aを成功させたかった。しかし、上場してまだ日が浅かった我々には、リージャスを手掛けるIWG社に最初に提示された金額は、到底買える値段ではありませんでした。値段交渉を何度も行い、なんとか値段のすり合わせをすることに成功しました。

「売ったら終わりじゃない、一緒に大きくしていこう」

馬渕磨理子馬渕:リージャスの買収には、他にも手を挙げていた企業があったそうですが、競合を押しのけてTKPが手にすることができたのはなぜでしょう。 河野:我々は日本で、貸会議室をここまで急成長させてきた自負があります。「レンタルオフィスの分野をリージャスとTKPで一緒に成長させたい」と伝えました。 馬渕:リージャスが譲らないのであれば、TKPがレンタルオフィスをやればいいだけの話ということですね。それは、リージャスにとって非常に恐い存在です。 河野:リージャスはイギリスを拠点としています。ロンドンからアジアは遠く、文化も違うのでアジアは別の企業に任せたいという思いがあったわけです。それならば、TKPと組んだほうがいいに決まっている。我々は、日本だけではなく、アジア展開も考えています。リージャスとTKPで、ともに成長してマーケットを拡大させていくために、リージャスに“フォローの風”を吹かせて欲しいと話しました。 馬渕:買収の値段を下げて、リージャスにTKPを応援して欲しいと。 河野:それだけではありません。IWG社のマーク・ディクソンCEOには、TKPの社外取締役に就任してもらっています。「売ったら終わりじゃない、一緒に大きくしていこう」と話しました。 馬渕:話を聞いてるだけで、汗がでてきました。そうやって、仲間になったわけですね。 河野:コロナ前にリージャスを買収していたことで、リージャスのもつハイグレードなレンタルオフィスを獲得できるようになりました。リージャスの価格帯に合わないお客様にも、TKPの貸オフィスを利用していただけるため、全方位的に網羅しています。全部が結果的に繋がっていますね。
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10年後はさらに、価値が高い企業に
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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