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スポーツ化と商業化の進むMCバトル。MC漢は社会に“コマ扱い”されないために「ヒップホップ連盟」の設立を目指す<ダメリーマン成り上がり道#45>

逮捕後に感じた「成長する必要性」

漢 a.k.a. GAMI2――漢さんは自分の組織を会社化して、レーベル運営やMCバトルの大会運営、飲食店の運営などもされています。ビジネスに関わる人が増えるなかで、マネジメントの点ではどんなことを意識していますか? 漢:「そこはもっと僕が頑張らなきゃいけないし、逮捕以後は特に『早く大人にならなきゃな』と感じてる。ただ、急に新しいことを始めても、周囲は『いきなり何だよ』『そういうことは自分でやってください』という空気になって、誰もついてきてくれない。『お互いが成長できるような組織にしていきたい』という意識を今は持っていますね」 ――組織運営ではとても大事なことですよね。正社員さんはそういうことはあまり……。 正社員:「考えていないです(笑)。漢さんはホントに敏腕ですよ。社員を抱えてお店も経営してるんですから。僕はマネジメントとかは絶対に向いてない・できないから、家族経営で小さくやってます。そこは漢さんと真逆だし、僕は漢さんみたいに人に優しくないんですよ」 漢:「優しくなさそう。恨まれちゃいそうだもんね」 正社員:「よく恨まれるんですよね……」 ――ほかにはどういった課題があると思いますか? 正社員:「僕はMCバトルの世界について言うと、まだ力のある大会の数が少ないのが問題だと思うんですよね」 漢:「俺ももっと数が増えればいいと思うよ。目標は最低でも16団体かな。あと俺はヒップホップの枠組みに入ったヤツは、シーンに対して責任を持たないといけないと思ってる。俺もそこは責任を持ってやっているつもりだし」

メディアにナメられたら、自分たちでメディアを作ればいい

正社員:「自分は自分の周囲の人間のことしか考えられてないんだな……と感じます」 漢: 「現実はそうだし、それでいいと思うんだよ。まずは自分が満たされて、自分の周りが満たされないと始まらない話だし、俺がさっき喋ったことは強制でもないし。でも『次の段階では、そういう意識を持ってみんなで頑張ってくのも考え方のひとつとしてあるんじゃない?』というのは伝えたい。  そうしないと、誰も潤わないで終わっちゃうから。ヒップホップ・シーンの全体が組織として強くなれば、もっとテレビにも出ていけるし、向こうからも『番組を作りたい』って話も来ると思うしね」 正社員:「僕もこの数年、テレビ番組の仕事がちょこちょこあったんですけど、そういう仕事に飽きちゃっているし、呆れてるんですよね。『何かちょっとな』と思うことがあまりにも多くて」 漢:「だって今のメディアとかテレビとかなんてクソじゃん。『だから自分たちでやろう』というのがヒップホップじゃん」 正社員:「そうなんですよね。『じゃ、出なくていいです』ってなることが多いんです。『もうYouTubeでいいよ』みたいな」 漢:「そういう話だと思うよ。俺らは俺らでメディアをつくればいいんだから。こういうインタビューが出るメディアもそうだけど、インターネットの環境が広まったことで、大手のメディアではカバーしきれなかった話とか、『メディアで報じられてる話ってウソばっかじゃん』みたいな話が広がるようになってきたから。  大きなメディアは、自分たちの政治的な都合で勝手にいろんな要求をしてくるけど、そういう場合は出なければいい。バカにされたら『じゃあ現場に来てみろよ』って戦い方でいいと思うけどね」
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まだまだナメられているヒップホップ業界
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戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く
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