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借金500万円男。届いたDMに誘われてタクシー代3万円を手にする

タクシー代をもらってもすぐには確認しない

3万円

こちらがいただいたタクシー代の3万円

 ショットグラスをすり切りカップと勘違いしたのか、なみなみに注がれたテキーラを渡される。日本酒が升に溢れるほど注がれるのは、元々最高級の歓迎の意を表すためだという。そうか、ここは日本だった。  溢れたテキーラが、升の代わりに一着しか持っていないズボンに溢れる。  ここが、「可愛いヤツ」と「いけすかないヤツ」の境目だ。酒が強いほうがいいなんてことはないし、飲みっぷりがいい人間ほど信用できるなんてバカなデータもない。  だが、人は抗えない。 「こいつ、飲めるな」  という感情に。  僕はあまり酒が強いほうではないので、酒でカマすには最初の1時間での勝負のみになる。一本勝負、只者ではない印象を植え付ける。  席はすでに2時間くらい経っているのだろう。すでにショットグラスが複数転がっていた。乾杯の直後に一つ飲み干すと、さらにもう一つ渡されたのでそれも飲み干す。 「初めまして、犬です」  ここで初めて相手と握手をする。思ったより手がデカい。

めちゃくちゃいい人か、真なる悪人か

「ここまでお疲れ様、はいこれタクシー代」  暗がりの中、札を数枚手渡された。領収書を求められずに先に金を渡されて確信に至る。この人はめちゃくちゃいい人か、真なる悪人のどちらかだ。普通ではない。  さて、こうして金を受け取ったとき、すぐに金額を確認してはならない。相手は、自分の目線と手をよく見ているからだ。  タクシー代をちゃんともらえたか、自分はこの瞬間にいくら得したのか、そんな打算は目線と手先に出てしまう。きっと相手は思うだろう。 「なんだ、ただの貧乏人か」と。  学も資格もない以上、ハッタリと口先で自分を大きく見せるしかない。「只者じゃない」雰囲気作りはこういった細部に拘ってこそ生み出せる。金に執着してる様子を見せてはダメだ。 「かわいそうだから小遣いをあげよう」  と 「面白そうなヤツだから優しくしてやるか」  この差は、あまりにも大きい。
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「お前は本当につまらなくなった」
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