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家を失った借金500万円男。20万円を握りしめて向かった先は

―[負け犬の遠吠え]―
ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。 それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。 「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は52回目を迎えました。  今回は、住んでいたお部屋を追い出されその後のお話です。

スーツケースを引いて目的もなく歩く

旅 家がなくなったからと言って、必ずしも財布の中身が0円とは限らない。悪さをした猫ちゃんのように、首根っこを掴まれて観念せざるをえない状況が、もしも来てしまったのであれば話は別だが、基本的に家がなくなる事実は事前宣告される。  大抵の場合、2年に一度、「その日」の1か月前までには家を出るかどうかの選択を迫られる。もう何もかも嫌になってどうでもよくなってしまえば、金は自暴自棄で雑な生活にすりおろされてしまうが、退去のその日、その瞬間までいつもと同じ日常を続けていれば家賃代は残るはずだ。  家がなくなるその日まで、僕はいつも通りに生活していた。例えば、世界が終わる日が決まり、ほとんどの人間が目先の欲望を叶えようと大暴れをする中で、日常の中に「本物の幸せ」を見つけ、いつもの朝を迎える老夫婦のように……。  本来の生活をしていればそこに「家賃分は働く」という習慣が残っているのは当たり前で、僕はその余剰分とドカタで稼いだ給料、合わせて20万円ほど持っていた。  家を出る当日、僕は実際のところ全く怖くなかった。20万円もの大金を持ったのは久しぶりで、最後にその金額を持ったのはちょうどコロナが始まった1年前、東京都から「貧乏人に貸してあげる」と言われて20万円を借りた時だった。そういえばその金の返済も今月末から始まってしまう。1年も待ってもらったんだから、せめて東京都にはしっかり返しておきたい。

家はなくなったがホームレスでは……ない

 家を出てスーツケースを引いていて、東京を目的もなく歩くことが久しぶりであることに気づいた。東京は時間の流れが早い。高卒でアルバイトをし、「若いね」と言われてた頃から「頼もしいね」と言われるまでは、アッという間だった。  賃貸物件に住んでいないこととホームレスであることは厳密には違うのだろう。  もちろん、どこにも定住していない以上、僕は文字通りでの「ホームレス」なのだろうが、たぶんほとんど全ての人がイメージしているような、公園のベンチで寝て、空き缶を拾うような生活にはならない。賃貸物件を失った後も僕の生活は続くし、働いているバイト先が休みになったりもしない。言葉に植え付けられたイメージ通りの「ホームレス」になるにはまだ若すぎるし、隠したいことも、逃げなきゃいけない相手もいない。家が無いだけだ。  久しぶりに電車を使わずに歩き続けていると、隅田川に辿り着いたので、そこから東京湾の方向へと下る。幸い、家を出たのは夜の22時だったので、外はカレンダーが示すよりも涼しかった。
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黙々と歩いて向かった先は……
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