SDGsで現場に押し付けられた無理難題「すでに持続不可能な状態だ」
街行くビジネスマンのスーツの胸元に、虹色の丸い輪っかのようなバッジをつけているのを見かけるようになった、という人も少なくないだろう。
いま、世界で広がりつつある「SDGs(持続可能な開発目標)」と呼ばれるムーブメント。特に日本では大企業が中心となって呼びかけている印象だ。しかし、日本国内の企業の99%は中小零細企業である。大企業から仕事をもらう立場にとって、SDGsはどうなのか……。
大手企業傘下の日用品販売メーカーから仕事を請け負うことで成り立ってきた山根さんの会社。メーカーやその上の親会社の意向は、何がなんでも「受け入れなければならない」と嘆息する。
「環境にやさしいプラスチックの開発とかリサイクルしやすい製品を、なんて口で言うのは簡単なんです。でもそれはあくまで理想であり、理想を実現するのは我々、現場なんです。上がこう決めたんで、山根さんの会社でも意向に沿った製品を作ってくれ、なんて言われてもね……」(山根さん、以下同)
じつは、コロナ禍直前にも同じような経験をしていたと振り返る。
「働き方改革ってあったでしょう? 元請けも親会社も必死になって社員の残業や休日出勤を減らすんですけど、そのシワ寄せは全部我々にくる。彼らがノー残業達成した、と喜んでいる裏で、こっちの残業や休日出勤が増えている、なんて現場の声は届きませんよ」
理想を掲げ、追い求めることの重要性は誰もが認めるところだろう。自然災害は増え、増加する人口や環境破壊と、課題を挙げればキリがない。
これらを解決することに誰も異議はないはずなのだろうが、ただ理想を唱えるだけの人たちの意向が先行し、実際に可能かどうか、現場がどれほどの苦労をしているのかについては、ほとんど陽の光が当たらない。
「正直、よくある押し付けでしょう。そんな感じしかしませんね」
こう話すのは、首都圏でプラスチック製品の工場を経営する山根俊郎さん(仮名・60代)だ。
現場に押し付けられた無理難題
働き方改革と同様に…
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