酒類提供が再開しても喜べない飲食店、“近隣の店の目”が怖い
沖縄を除く9都道府県で緊急事態宣言が解除され、全国の繁華街に人が戻りつつある。市民は長らく続いた自粛生活からようやく解放された気分なのだろうか。これまで飲食店は、さまざまな要請などに対応しながら苦戦を強いられてきたが、客が増えても素直に喜べないという人たちもいる。
「オーナーはすごく嬉しそうでしたよ。宣言明けの営業日には、ビールのタダ券まで常連さんに配る始末だったんです」
東京都は「まん延防止等重点措置」に移行、酒類の提供も再開された。ラーメン店の従業員・富永康子さん(仮名・30代)は、コロナ禍になってからというもの、出勤数は以前の半分程度になってしまい、生活的にもかなり困窮していた。
やっと通常営業に近い形で店をオープンすることができた。これで少しはまともな生活ができると喜んでいたが、そう甘くはなかったという。
「やってくるお客さんが多すぎるんです。常に満席で、4~5人の団体のお客さんも、久々にみんなで食べられると、マスクを外して大騒ぎ」(富永さん)
すでにワクチン接種を済ませている高齢の母親と同居中の富永さん。万一のことがあったら怖い、ということで、オーナーにシフトを減らしてもらうようお願いすることも考えたというが……。
「店が苦しいなかで、オーナーはようやくお客さんが戻ってきたことを涙を流して喜んでいました。そんな状況で、水を差すようなことは言えなくて」(同)
神奈川県では、営業時間短縮の要請は以前と変わらず20時まで、19時までは「1組あたり4人以内」「滞在時間は90分以内」などの条件で酒類の提供が認められた。県内の居酒屋経営・幸島孝明さん(仮名・40代)も同様の悩みを打ち明ける。
「酒類提供が再開しましたが、まん延防止措置で本当は19時までしか出せないはずなのに、19時を過ぎてもばんばんオーダーが入るので、私たちも出しています。おかしいとは思いましたが、“近隣の店の目”もありますから……」(幸島さん)
“近隣の店の目”とは、どういうことなのか。
客足は増えたが、マスクを外して大騒ぎ
19時を過ぎても酒のオーダーが入る
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