ライフ

サウナ運営者たちが悩む、マナー問題とコロナ禍での売上減

コロナ禍のサウナブームで悪化するマナー問題

最高のサウナ

ニューウイング 吉田 健氏

吉田:経営困難に加えて、コロナ禍でマナー問題も深刻になったよね。ブーム以降、友達同士で行動を共にする、いわゆる“ドラクエ客”や、浴槽の縁に座って延々と談笑するサウナに不慣れな若者が増え、常連の不評を買っていた。そこに感染防止の「黙浴」という新しいマナーが出てきたけど、なかなか守ってもらいにくいね。 井手:黙浴の難しさは、ルールとマナーの混同にもありますよね。コロナ禍ではルールですが、収束したらどうなるのか。健康センターとしては親子の会話や、常連客の交流は失いたくないので、談笑の一律禁止はためらわれます。 林:マナー問題でいうと、そもそもマナーを知らない人が多い。浴場でタオルを持っていない人を注意したら「体を拭いてサウナに入るなんて知らなかった」と言う。マナー周知はスタッフが地道に口頭でやるしかない。あと、ウチでは熱波師の言葉が効果抜群です。サウナーは彼らを敬愛してるから、言うことを素直に聞くんですよ。「ニューウイング」だったら吉田さんの注意も効きそうですね。 吉田:もちろん僕が言うのはいいんだけど、スタッフが全員気の強い人ではないんだよね。お客さんに「あいつらどうにかしてよ」と言われても、女性スタッフは錦糸町の怖い男性に対応しづらい。そのへんの事情は考慮して、マナーを守ってくれているお客さんもスタッフを責めないでほしい。常連は寛容を、新人サウナーは気遣いを心がけてくれると助かります。

常連と新人がうまく共存する施設が理想

井手:常連と新人がうまく共存する施設が理想ですね。高齢の利用者が多い老舗が存続するには、新規のお客さんが増えるに越したこ とはないですから。都心で最新サウナ施設が若者を中心に盛り上がっている一方で、ここ30年間で誕生した地方の健康センターの多くが、施設の老朽化や高額な維持費に悩まされ、コロナ禍かどうかにかかわらず存続の危機にある。最近僕は全国の健康センターで組合を結成し、生き残るためのアイデアを共有できないかと考えてます。 林:設備や施設といったハード面のリニューアルが予算的に難しい老舗は、スタッフやイベントなどソフト面に注力するので、つくる人の個性が反映されやすい。僕の行きつけの銭湯は、店主がクイズを出して景品をくれるんですよ。このサービスの是非はともかく、老舗でも頑張ってるところはオリジナルの魅力を発揮していて面白い。それに老舗サウナって、孤独なおじさんを包み込んでくれる数少ない居場所でもあると思います。 吉田:これ以上失うと、行き場がなくなりますね。サウナ運営をしていると、優秀なサウナでは、つい観察しちゃって安らげない。商魂たくましい施設だけ残ると困るから、自分だけのお気に入りのサウナに通い、支えるんです。 =====  業界の活性化には最新サウナも欠かせないが、老舗の魅力は失ったら最後、二度と味わえない。だから僕らは今日もサウナに行く。
次のページ
この老舗がすごい!
1
2
3
4
ベストサウナ

アナタだけの“ベストサウナ”は、本書を読めば見つかるはず

おすすめ記事
ハッシュタグ