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日本で暮らすミャンマーのロヒンギャ族を直撃。祖国の急変に何を想う?

国軍という「共通の敵」、民主派との歩み寄り

 しかし一方で、ここ最近になって民主派の人々からロヒンギャ族への融和の姿勢が顕著であるのも確かだ。日経新聞によれば、ミャンマーの民主派勢力でつくる挙国一致政府(NUG)のササ氏が、ロヒンギャ族に市民権を与えようとする考えを表明。東洋経済オンラインも首都ヤンゴンの第一医科大学学生連盟が、ロヒンギャ族に対する謝罪文を発表したことを報じている。  民主派政権下の平時では考えられなかった進展が、このクーデターを契機に見られている。だがこれに対しても、モハメッドさんはあくまで割り切った考えを示している。 「この問題が解決したら、もう一度突き放されてしまうかもしれません。そういう恐怖感はあります。市民権の話も、アメリカからの支援を受けるためのポーズでしょう。民主派のビルマ族の人々とは協力したいと思っていますが、『ロヒンギャ族はミャンマー人ではない』といまだに嫌がられることがありますから」  インタビューの終わりにどうしても聞きたいことがあった。無国籍者として差別され日本で暮らす彼は今、どこの国に帰属意識があるのだろう。 「私はロヒンギャ族で、ミャンマー人です。ミャンマーには民族がたくさんいて、その中の一つなんです。ラカイン族やビルマ族には『ベンガリ』と言われ差別されてきましたが、恨む気持ちはありません。人間は皆兄弟です。国軍に対しても倒すとかではなく、和平を結んでビルマ族、ラカイン族、ロヒンギャ族の誰もが平和に幸せに暮らせることを願っています」  一方で、今後の見通しについては現実的な見解を持つ。 「今後ミャンマーはシリアのような紛争地帯になるかもしれません。しかし、戦い疲れた後に平和が戻ってくるかもしれない。いつかは日本のようないい国になって欲しいですね」    筆者としては、民主派が示す融和姿勢が今後も持続することを願いたい。平和を取り戻した上で、ロヒンギャ族の人々が「祖国」に戻れる日はいつになるのだろうか。 <取材・文/大河内光明(@komei_okouchi)>
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