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京大卒芸人が投じた「学歴至上主義への嫌気」ツイートの真意。本人を直撃

2022年1月15日、東大弥生キャンパスで17歳の男子高校生が通行人を刺傷した。同事件では犯人である少年の東大医学部入学と学力偏差値に対する執着が報道されており、「偏差値教育・学歴至上主義と日本社会のありかた」が問われている一件でもあった。 この報道を受けて京大卒の芸人「九月」さん(29)が以下のツイートを投稿。大きな反響を呼んだ。

反響があった九月さんのツイート

京大卒という学歴を手にしながら、芸人への道を歩んだ九月さん。「社会病理」発言の真意はどこにあるのだろうか。お話を伺ってみた。

レールを外れるために京大に進学したが……

1992年、青森県八戸市出身の九月さん。現在はお笑い芸人として全国で公演活動を展開し、YouTubeでもネタを公開している。日常の中に溶け込む違和感や独特な世界観が持ち味で、奇抜な設定の中に独自のおかしさが際立つ。ピン芸人として公演会場を魅了する個性の持ち主だ。

九月さん

「高校の時は太宰治、中原中也、フランツ・カフカなどをよく読み、音楽はレディオヘッド、Syrup16gなどが好きでした。将来は好きなことを好き放題やって、好奇心の赴くままに生きたいなと思っているかんじでしたね」 両親は公務員などの仕事に就いていたが、本人としては自由への憧れが強かったという。「東大か京大に行けたら何をやってもいいよ」という両親の言葉にも後押しされ、実際に京大を進学先に選んだのも自由な校風が理由だった。 京大では、自分自身が受けてきた学校教育に対する漠然とした疑問もあり、学部は教育学部を選ぶことに。しかし、実際に進学してみると、そこには今まで感じてきたものとはまた別の束縛が存在した。当たり前のライフコース、想定された成功、その環境下で学ぶことにしたのは、現象学的社会学だった。 「学者でいえばシュッツ、バーガー、ルックマンなどです。現象学的社会学は人間がいかに社会的な現実を認識するのかを扱うような学問です。僕は自分が生きている現実に、ある種の不確かさや曖昧さを感じていたために惹かれました。当たり前の前提とされているものについて、いくつも疑いを付していくような考え方をする分野です」

絶対的とされる価値観に疑問

例えば、シュッツは「人それぞれ社会の捉え方や認識は異なる」と主張する。個々人で経験する「現実」は異なる。こういった大学での学びが、今回の発言にも繋がっているのだろうか。 「そういった部分はあると思いますね。教育に関して言えば、同じ年齢の人間が同じ場所に同じ服でいるという部分に疑いを持つことはありました。強烈な反発というよりは『別にこのやり方じゃなくてもいいのに』と。大学生の頃は、教育系のベンチャー企業のお手伝いをし、従来の学校教育とは異なる教育手法の実践に関わったりもしました。教員が一方的に教えるのではなく、教員のファシリテートのもと生徒が学びあう形式の授業であるとか。新鮮で興味深かったと記憶しています」 絶対的な価値観に疑問を持ち、角度を変えたり反転させて物事を捉える。自由な生き方の根底には、そういった柔軟なものの考え方があるのかもしれない。
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学歴至上主義について思うこと
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