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芸人の師弟制度が存在する意味とは?誰もが“芸”を配信できる時代に考える

落語家として13年目にして初弟子を取る

師匠 月亭方正君が、2008年に落語家月亭八方師匠に入門してから13年を経て、今年の4月に初めて弟子を取りました。月亭柳正(りゅうせい)君、元NSC生で私の生徒でもありました。方正君もNSC出身なので、師弟共に元NSCということになります。  一般的に落語家さんの弟子修行は「内弟子」と「通い弟子」に分かれ、「内弟子」は師匠の家に住み込み通常3年間は師匠と寝食を共にして、食事の用意や買い物、洗濯など師匠宅の雑用をやることで礼儀作法を覚え、運転ができれば運転手も務め、もちろん噺の稽古をつけてもらって落語家への階段を一段ずつあがっていく。 「通い弟子」は概ね師匠宅の近くに部屋を借りて、毎日通いながら「内弟子」と同じ弟子と同じ修行をつむことになる。柳正君はこの「通い弟子」になります。

師匠と先生の違い

 NSCの講師ということで、私のことを「師匠」と思われる方もいらっしゃいます。確かに授業を受け持ち、いろいろ教えるわけですから「先生」には違いありません。  しかし、NSCというのはあくまでお笑い業界に入るための入り口ですから、さしずめ私のような講師はナビゲーターとでも言いましょうか。講師と生徒としての時間は1年間だけですから、決して、その子の人生を左右するほど濃密なものではありません。  でも「師匠」は違います。その子の人生に大きな影響を与える、場合によっては決めてしまう存在です。
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桂文珍が見せた優しさ
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漫才作家。'84年、オール阪神・巨人の台本執筆を皮切りに、漫才師や吉本新喜劇に多数の台本を提供。'90年吉本総合芸能学院(NSC)講師就任。担当した生徒は1万人を超える。著書に『吉本芸人に学ぶ生き残る力』(扶桑社刊)などがある

吉本芸人に学ぶ生き残る力

NSC講師として1万人以上の生徒を送り出した伝説の講師が教え子たちに教えた生き抜く術とは


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