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芸人の師弟制度が存在する意味とは?誰もが“芸”を配信できる時代に考える

師匠のためなら死ねると言った巨人さん

 長年、台本を書かせて頂いているオール阪神巨人さんは「漫才師」の弟子ではなく吉本新喜劇の岡八朗師匠のお弟子さんでした。  伺ったお話では素人のお笑い番組の常連で共に有名人だった阪神巨人さんが、吉本へ入る手段として当時は誰かの弟子でなければ舞台に立てなかったので、ちょうど弟子がいなかった岡八朗師匠に預けられる形で巨人さんが入門、業界のことを学びながら、まだ高校生だった阪神さんの卒業を待つということでした。  ですから、岡八朗師匠が好き好きでたまらなくて弟子になったわけではなかったのです。それでも身の回りのお世話をしているうちに、その人柄に心底惚れ込み「師匠のためなら死ねる」とまで心酔されたことを著書『師弟』で書いておられます。そんな巨人さんについて、岡八朗師匠も「巨人は完璧な弟子やった!」と絶賛されていました。

前日の夜に道順を確かめに行った

 巨人さんから伺って驚いたエピソードをひとつ。翌日の営業先へ車を運転して師匠を会場までお連れするのに、地図を見てもはっきりわからなかったので、前日の夜、弟子の仕事が終わってからバイクで会場までの道順を確認されたうえで当日、師匠をお連れしたというのです。 「師匠乗ったはんのに、道間違えられへし、途中で人に聞くなんて失礼なことできひんやろ」  巨人さんはそれが当たり前だというようにおっしゃっていました。芸を超えてその人に惚れ込んでいく「師弟関係」というのは他の物には計り知れない縁や絆で結ばれているのだと思います。
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子供が芸人になりたいと……
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