更新日:2021年08月02日 20:53
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ネット上でお賽銭を募る「カミムスビ」は新手の神社ビジネスか?運営を直撃

神社にとって今でも電話と郵送が基本

 そうした中で、お賽銭機能は運営団体の考えた「一刻も早く地方の神社を助けたい」という思いとは裏腹に、神社の人々の気持ちを逆なでするものとなってしまった。なぜなら、いかにネットサービスが普及して生活が便利になろうとも、オンラインで参拝、神札や御守りの購入はあり得ないというのが多くの神社の見解だからである。  コロナ禍で密が避けられる中、神社の中にはサイト内にオンライン参拝の機能を設けたり、神札や御守りのオンライン購入を可能にしている社もある。だが多くの神社ではこれはありえない行為と捉えている。オンライン参拝の是非は2006年頃に一度大きく取りざたされたことがある。一部の神社は「手紙がネットに変わっただけ」と推奨したが、容認しない方が神社のほうが多かった。  2006年7月には神社本庁が「インターネットに関はる尊厳性の護持について」という通知を各都道府県の神社庁に出し、インターネットを用いた参拝や祈願、神札などの頒布を「インターネットに関はる神社の尊厳性の護持上、問題となる事項」として指導を求めている。  いまでは多くの神社が公式サイトを設けており、遠方で参拝が困難な場合の祈願の案内や神札などの授与について説明するページを設けている。それも、電話かメールで問い合わせて郵送が基本。オンラインショップよろしくネットで入力すれば完了という神社のほうが少ない。  筆者も崇敬する熊野那智大社はなかなか参拝が困難なので神札を送って貰っているのだが、メールで問い合わせた後、振込用紙同封で郵送されてくるので郵便局で納付する形になっている(とても丁寧でのちほど葉書で入金確認のお知らせが届く)。  本来は直接尋ねて参拝が基本。もしも、それが出来ない場合には古来から行われている神社の方角を拝む遙拝という風習がある。だから、あえてインターネットのサービスを用いる必要はどこにもないわけである。

「詐欺だ!」と騒ぐ前に考えてほしい

 昨年、コロナ禍での初詣を前に神社本庁でマスコミ向けのセミナーが開催された。ここで筆者は密を避けるために初詣の参拝ができないが、お賽銭を納めたい場合にはどうすればいいかと尋ねた。  それに対して担当者が語ったのは、混雑を避けて遅い時期に参拝しても、自分が初詣だと考えれば初詣ということ。もしも、参拝が困難な場合には、次に参拝した時にまとめてお賽銭を納めてもいいし、現金書留で郵送しても構わないというものだった。  しきたりに厳しい部分もあるが、実勢にあわせてアバウトになるのも神社の姿である。まずは日々、信仰心を持っているかが肝要なところだろう。今回のお賽銭騒動で雨後の筍のように「詐欺だ」とネットで騒いでいる人たちはどうなのだろうか、と思った。
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』
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