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郷ひろみがデビュー50周年に語った仕事の流儀

「やる」と言った瞬間から迷いはない

郷ひろみ――郷さんのパフォーマンスはご自身のライブのみならず、テレビの歌番組等も含めてどんなステージでも常に“やり切っている”という印象があります。そんな郷さんであっても、やり切るのが難しくなる時、あるいは迷う瞬間というのはあるのでしょうか。 郷 新しい仕事の話が来たときに、「これはどうだろう? うまくいくかな?」と思うこともときにはありますよ。でも、迷うのは、やると決める前までですね。打合せをして、一度首を縦に振って「やる」と言ったら、その瞬間から僕の中に迷いみたいなものはもうないです。  たとえば、もしどこかに迷いが残ったままステージに立ってしまったら、それはきっと観ている人にも伝わってしまいますよね。「大丈夫かな?」という空気が。「分かった」と言った瞬間に迷いは捨て去るので、それが残ったままステージに上がったことは一度もないですし、迷ったまま仕事を受けることもないです。 ――年末の歌番組などでは、郷さんよりも50歳近く若いアイドルの方とコラボレーションされることもありますよね。郷さんほどの方であればそれを断ることもできると思うのですが、若い方とのコラボにも果敢に、しかも前向きにトライしてらっしゃるのが印象的です。ご自身の中で「これは自分の方向性とは少し違う」と感じたりすることはないのですか? 郷 多分、僕のところに話が来るまでに、スタッフの中にもいろんな葛藤があると思うんです。「これはさすがにどうだろう?」とか。でも、僕のところまで上げてきたということは、スタッフの中でのある程度の勝算があるのかなと思うので……。まあ、アテにならない勝算ですけどね(笑)。実際にどうなるかはやってみないとわからない。  でも、僕自身がどれだけ自分を客観的に見ようとしたとしても、そんなのたかが知れていると思うんです。スタッフのみんながそれを違った角度から、僕以外の他人の目線から見て判断してくれているわけですから、ある意味彼らの目を、あるいは耳を信じようっていうのはありますよね。だからさっきお話ししたように、打合せの段階では迷うこともあります。「そのコラボはさすがにどうなんだろう?」、と……。でも「わかった、やるわ」となったときには、迷いはもうないです。

やり切って初めてわかること、見えることもある

――「やる」と決めた瞬間に腹を括るのですね。 郷 はい。“信じる”ということですね。僕の仕事はそこからやり切る、演じ切るということだと思うので。どんなステージでも、やると決まったら、あとはもう100%の準備をしてステージに立つ。そしてやり切るだけです。 ――周りのスタッフの皆さんを心から信頼してらっしゃると。 郷 そうですね。自分が見られない部分を、客観的に別の角度から見てくれているわけですからね。例えば今回の「100GO!回の確信犯」では、ダンスの振り付けが今までとは違う人なんです。それに関しても、「どうかな?」と思ったとしても、スタッフはある考えを持っていっているんだなと思い、その意志を尊重する。そして、その振り付けの人間に、「まず一回見せてくれる?」ってお願いして。それで、この方向でやることが自分にとってプラスになるんだろうな、と感じたら、どんなに大変でも文句は言わないですよ。途中で止めるってこともない。  僕の中で決めていることがあって、準備していく中であるところまでやり切っちゃうと、「いや、やっぱりこっちの方がいいよね」っていうのも見えてくるんです。それと同時に、それを周りに対しても言えるんです。もし中途半端にしかやれていないのに、「これは違うと思う」と言ったら、「いやいや、できないからそう言っているだけでしょ?」と言われてしまいますよね。僕はそれがすごく嫌なんです。  全力でやってみて、「確かにできたけど、でもこっちもあるよ」って意見するべきなんじゃないかなと思うので。その方が説得力あるじゃないですか。やり切って初めてわかること、見えることもあるのに、やらないでそれを言っても多分周りも納得しないと思うんです。そこは僕の中のスタンスとしてありますね。
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30代からは自分で掴んでいくしかない
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フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129

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