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郷ひろみがデビュー50周年に語った仕事の流儀

30代からは自分で掴んでいくしかない

――なるほど。キャリアのいつ頃からそう思われるようになりましたか? デビューして間もない頃と、ある程度キャリアを積んでからでは見え方や考え方も変わると思うのですが。 郷 確かに、デビューした当初からそう思えていたわけではなくて、いつの頃からか、徐々にそう思うようになっていったんでしょうね。目の前のことを闇雲に頑張る、ひたすら走り続けるという10代20代の頃があって、でもあるときから、僕の場合は30代だったと思うんですけど、「30代からはもう人が運を運んでくれないよな」、「自分で掴みに行かなきゃいけないんだな」って気付いた瞬間があって。それがわかった瞬間からもう、自分で運を掴みに行くんですよね。「もっとやらないと」って。  まあ考えてみたら、社会と一緒ですよ。何にもわからずに就職して、20代の頃はいろんな人がいろんなことを教えてくれる。失敗しても、誰かが助けてくれる。でも、30代になったら立場が逆転していくわけじゃないですか。今度は下の世代の人たちに教えていかなきゃいけない。自分のことは自分で責任を持ってやり切るしかない。それと同じことなんですよね。誰も運を運んできてはくれないから、自分で掴んでいくしかない。多分僕もそうだったんだろうと思います。  特に僕の場合はグループじゃなくて、デビューからずっと一人でやってきているから、上手くいかなかったときに誰かに責任転嫁するということもできなかった。失敗したらすべて自分の責任だから、その中で自然と一つ一つの仕事により責任感を持って向き合うようになっていったのかもしれません。

その時点での100%を尽くしてOKを出している

――だからこそ、先ほど伺ったように「一度やると決めたら腹を括ってやり切る」わけですね。 郷 そうですね。ステージに立つときも、レコーディングして音源を作っていく過程でも、自分でやり切るしかないんですよね。そうしていつの頃からか、中心に追いやられていく自分がいたわけです。  だから今回の「100GO!回の確信犯」にしても「狐火」にしても、製品になっていく過程で、僕が全部聴いてOKを出している。「ベースの音がちょっと小さいな」とか、「ドラムの音はこうじゃないな」とか、一つ一つ細かく確認して、完璧に納得のいくものになって初めて「OK! これで行こう」となりました。  ただそうは言ってもね、過去は秒単位で全部過去になっていくから、「やっぱりあのときこうすればよかったなあ」っていうのは絶対ありますよ(笑)。でもそれは、常に前進している自分がいる、未来に向かっている証だから。過去は過ぎ去ったものであって、先に進んでいる自分がいるのだから、当然目や耳が肥えてきて、ギャップが生まれるのは当たり前。でもそのときは、その時点での100%を尽くしてOKを出している。
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絶対に妥協はしない
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フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129

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