更新日:2021年08月04日 12:24
エンタメ

郷ひろみがステージに上がる理由「実は僕自身が一番励まされている」

何千回何万回と歌ってきた曲ほど一番慎重にならないといけない

――なるほど。それと少し関連するのですが、郷さんほど輝かしいキャリアを積まれた方になってくると、ご自身のライブであろうがNHK紅白歌合戦であろうが、気分が高揚することこそあれ、いわゆる緊張してしまうようなことはもうないのではないかと思うのですが、いかがですか? 郷 ドキドキして「どうしよどうしよ」っていうのはさすがにもうないですね。手に汗握るようなこともないですし(笑)。逆に自分の中で、あえて緊張感を高めて臨むことはあります。  というのも、僕の経験上、人間は「これは任せておいて!」って思った瞬間にだいたい足元をすくわれるんです。これは周りにも言っているんですけど、「人は得意分野で失敗するよ」と。だから僕だったら「よろしく哀愁」「お嫁サンバ」「2億4千万の瞳」という、何千回何万回と歌ってきた曲ほど一番慎重にならないといけない。  ほんの少しの心の隙。油断がいかに怖いかということです。本人は油断しているつもりはなくても、つい心のどこかで、「まあ大丈夫だろう」と思ってしまっていることってありますからね。  逆に得意じゃないところは自分でも得意じゃないってわかっているから、すごく慎重になるんですよ(笑)。得意なことほど慎重になったほうがが良い。僕はそうやって自分に言い聞かせています。

じつは僕自身が一番励まされている

――最後に、現在開催中のツアーについて聞かせてください。5か月間で全55公演を行うツアーも間もなく折り返し地点。コロナ禍でのライブなので通常時とは雰囲気も少し変わると思いますが、実際にステージに立たれていかがですか? 郷 収容できるのが会場の最大収容人数の50%で、それは仕方ないとしても(お客さんが)声を出したいけど出せないっていうのがね……。致し方ないことだと理解していても、やはり僕としても心苦しい思いです。  僕自身のパフォーマンスの中でも、「あまりお客さんを煽るようなアクションはしない方がいいのかな?」と考えてしまいますね。みんなついノリたくなってしまうと思うので。「あーこれやり過ぎちゃったかな?」と思う瞬間もあります。  でもね、こういう状況の中でも会場に足を運んでくれる人の勇気、その気持ちを、僕の中では本当にありがたく受け止めています。“逆に勇気をもらっている”というのかな。僕はみんなに楽しんでもらいたくて、少しでも元気になってもらいたくてステージに立っているのだけれど、じつは僕自身が一番励まされている感じはしますよね。  いつもなら全国何公演も観に来てくださる方でも、こうした状況下で、今年はコンサートは止めておこうとか、家から近い公演だけにしぼっているとか、あるいは我慢して一回だけ観に行こうという方もきっといらっしゃると思うんです。  この一回だけのために、勇気を出して観に来てくれたんだろうなっていうのは、こちらとしても、ある意味手に取るようにわかっているので。そのエネルギー、雰囲気はステージの上にいてもヒシヒシと伝わってきます。  だからこそ、より最高のショーにしないといけない。そういう気持ちはいつも以上に強いです。僕自身もバンドメンバーもスタッフも、そのために100%の準備をしてきました。こんな時だからこそ、心から楽しんで帰ってもらいたいですね。 <取材・文/福田悠 撮影/嶌村吉祥丸>
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129
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