エンタメ

なぜキングオブコントの王者はM-1王者よりも注目されないのか

観客と作る「三角形」

本多正識

本多正識氏

 コントと漫才、その最も大きな違いは、「漫才」は演者とお客さんとで「三角形」を作って、客席も巻き込むことができないと大きな笑いはとれません。ある意味、観客は行動としては見ているだけでも実質、漫才に参加しているのだと私は思っています。参加させることのできる漫才がおもしろい、うまいと言われる漫才です。 「コント」はこの三角形を作るというよりも作品を鑑賞してもらうもので、そこにお客さんが入り込む余地はないといえるでしょう。 「M-1グランプリ」は同じステージでマイク1本の前で次々に出演者が登場して、同じ土俵でその技を競います。一方「キングオブコント」はステージは同じでも、コントの内容によって、セットが変わる、演者の衣装も変わるので土俵も変わってしまいます。ですから素でおもしろいと思われた「M-1王者」のほうが世に出やすい環境にあると考えています。  テレビに呼ぶ場合、インタビューだけならどちらも変わりませんが、ネタとなるとマイクを1本用意すれば「M-1王者」と、まずセットを用意しないといけない「キングオブコント王者」では“手間”と“お金”が全然変わってしまいます。  これが営業になるとさらにシビアで、景気のいい時は関係ないと思いますが、そうでないとコンビを二人だけで呼ぶのと、セットや小道具をを用意するのとではかなり差がでるでしょう。

M-1もキングオブコントも「競技用」

 私は「M-1」も「キングオブコント」も「競技用漫才」、「競技用コント」と呼んでいます。40年近く前は漫才は15分が当たり前、テレビでも若手で5分、ベテランは12分から15分でした。ですから競技用で勝っても本当の実力を身に着けないと身を削っていくだけでいつか潰れてしまうと心配しています。そのため、王者になったコンビこそ、さらなる勉強が重要になってくると思います。  よくテレビで見ていて「なんであんなに笑うの?」「全然おもしろくない」というツイートや話を聞くことがありますが、生のスタジオの空気とテレビの前では比べようがない差があるのです。それでも関係なく笑いを取れるのは真の実力があるからでしょう。  だからこそ放送するテレビ局へのお願い!  無駄に演者の顔に寄ったり、ワンショットの画を撮るのを避けて、スタジオで見ているお客さんと同じよう見えるサイズで映像で作ってほしいと思います。それから、「M-1」の敗者復活戦、「日本一の漫才師」を決めるなら寒空で震えながらネタをやらせるのは、やめてあげてください!
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