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パラ開会式当日も見られるブルーインパルスが抱える苦悩/自衛隊の“敵” 第5回 小笠原理恵

自衛隊パイロットが途中退職する真の理由は何か?

 民間航空機パイロットと違い、自衛隊パイロットはフライトに付帯する飛行計画作成や手続きも行います。フライト前後の事務作業にも時間を忙殺され、休養に充てる時間が少ないことも退職理由の一つです。さらに、自衛隊ではパイロットも幹部自衛官として地上勤務に配置換えされます。自衛隊は労働基準法適応外であり、常に人材不足ですから、地上勤務も上司の命令で想像を絶するような長時間労働を強いられることもあります。  たとえば、「市ヶ谷プリズナー」という言い回しは囚人のように家に帰れず、職場で寝泊まりして仕事する幹部自衛官を揶揄した俗語です。市ヶ谷にはカプセルホテル形式の仮眠室がありますが、数が足りないために全員が利用できません。市ヶ谷勤務のキツイ仕事に当たると職場に段ボール箱を潰して、床に敷きそこで幹部が寝泊まりしています。3か月に一度家に帰れるかどうかという長時間労働もよくある職場です。労働基準法の適応外ですから長時間労働も合法で問題視されていないのでしょうが、休養の取れない長時間労働に人は耐えられません。このようなキツい陸上勤務の配置での仕事はパイロットの途中退職の理由となります。  次に転勤の多さも退職理由となります。幹部自衛隊員は配置換えや転勤が頻繁にあり、人間関係が落ち着くことがありません。2年に一回ほどの間隔で転勤が続くため、常に大きなストレスを抱えて日々生活しています。若いうちはともかく、お子さんがいると転校は大変です。何度も小学校を転校すると、学校に馴染めないので友達もできません。持ち物がほかの子と違うためにいじめの原因になることもありますし、それを回避するために制服や道具類を毎回買い替えればその負担も家計に重くのしかかります。また、自衛隊員の定年は一般より早く50代半ばと規定されているため、わずかな若年給付金では足りず、年金受給までの老後の貯えにほとんどの配偶者が働いています。ここでも転勤が多いために、「公務員の奥さんは転勤で長く勤められないので採用できません」と仕事探しも難しいようです。

ペナルティ(罰金)よりもインセンティブ(報酬・ご褒美)を!

 このように、自衛隊内には勤務を続けられない問題点が山積しています。自衛隊パイロットに対して育成費用を請求する前に、まずは退職理由となる職場問題を改善していただきたい。数年ごとに転勤を繰り返して全国を広く浅く知る幹部をつくる伝統が自衛隊にはありますが、一つの地域に長く勤めることでその土地を知り尽くすことも重要。これだけで転勤費用が削減でき、パイロットが途中退職する理由が一つ減ります。お子さんの小学校転校を考え6~10年で一回の転勤なら家族のストレスも軽減され、ひいては国の支出も低く抑えられます。改善可能なところはたくさんあるのです。  途中退職を減らすためにはペナルティ(罰金)ではなくインセンティブ(報酬・ご褒美)にこそ力を入れるべき。安全保障にはお金をかけ、パイロットを大事にすることで自衛隊に長く勤めていただきたいものです。 <文/小笠原理恵>
―[自衛隊の“敵”]―
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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