更新日:2021年08月14日 12:24
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<純烈物語>今秋公開 映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』のはじまり― 酒井が口にした夢を山本康平は憶えていた

酒井君は「心配しないでください。絶対に問題ないです。おばちゃんたちはついてきてくれます!」と断言するんです

「本来ならばヒーローモノはチビっ子と特撮ファンに向けてのものとして作りますけど、純烈が絡むとなるとそこは変わってきますよね。当然、変身することや戦闘シーンについて理解してもらえるか話の中で出たんですけど、酒井君は『心配しないでください。絶対に問題ないです。おばちゃんたちはついてきてくれます!』と断言するんです。そこまで言うなら、酒井君を信じてやりましょうと。  ムード歌謡グループをやると聞いた時も、酒井君の考えていることは突飛すぎてわからないというのが正直なところだったんです。『クラッシャーカズヨシ~怒る~』の撮影中に脚を骨折して見舞いにいったんですけど、そういう話はまったく出なくて。あとになって脚を天井から吊るされながらそんなことを考えていたのかってわかるという。だから強いですよね。今回も映画一本で出してきたから、あとはどう動けばいいかだけだった」  ハリケンジャーのオーディションに受かり、右も左もわからずこの世界へ飛び込んできた山本にとって、酒井はスーパー戦闘シリーズ前作に出演していた1つ上の先輩となる。後楽園ゆうえんちが東京ドームシティアトラクションズに生まれ変わったあと、現ミーツポートと隣接する場所に野外劇場「スカイシアター」があった。  そこで開催されるヒーローショーに酒井が出ていて、山本も見にいった。Vシネや『忍風戦隊ハリケンジャーVSガオレンジャー』の撮影で一緒になるとアドバイスをしてくれる兄貴的存在であり、イベントにも呼んでもらったことがあった。  そんな関係にあった酒井と、何よりもハリケンジャーでいいことも悪いことも経験した白川と一つのものを生み出せるのは嬉しかった。自分で企画を立て、制作がスタートして会話をすると何度となくあの頃の情景が蘇ってきた。

制作だけでなく、役者として加わることによって撮影時の空気感を4人のメンバーと共有

『スーパー戦闘 純烈ジャー』の三井康助役だけでなく“企画協力”として山本がクレジットされているのは、以上の経緯があってのものだ。その実行力……いや、機動力といった方がいいだろう、迅速な動きによって話は円滑に進み、純烈初の映画作品は形となったのだ。 「企画を立てる時に、自分も(演者として)出させてくださいって頼みながらやりました。さすがに出演しないと、僕も事務所(太田プロダクション所属)に言えなくなっちゃうんで、ハハハ。『あいつは自分も出ないのに何やってんだ!』ってなるじゃないですか」  制作だけでなく、役者として加わることによって撮影時の空気感を4人のメンバーと共有できた。山本はメイキング用の映像も自分で撮った。  スーパー銭湯における撮影時、たまたまファンが利用していた。そこで見たのが、酒井独特の“粗い扱い”。純烈文化としてはお馴染みでも、それを知らないと独特な間合いに映る。 「こんなぞんざいな扱いでいいの!?」となるのだが、見ると酒井にイジられてもまったく嫌な顔をしておらず、むしろしあわせそうに喜んでいる。それによって山本は、純烈ならではのファンとの関係性を学んだ。  また、カッコよさと可愛げが同居する白川の素顔も懐かしかった。背が高く、シュッとしている一方で時おり「抜けているところが出る」(山本)ギャップは、昔のままだと思えた。  撮影の待ち時間中、誰よりもいろいろな人と会話し、スタッフに至るまで周囲を和ませ、ケアする小田井涼平はメイキングのカメラを回しても楽しませようとしてくる。それによって“あの純烈”とクルーの距離が縮まった。そして戦隊ヒーロー初チャレンジの中で後上翔太は……頑張っていた。 「後上君をヒーローにしたいという酒井君の狙いに応えようと、真面目に取り組んでいましたね。毎日毎日走っているイメージですね。というのも、後上君が走るシーンをいくつか撮って、それをどの場面に組み合わせるかっていうやり方だったんです。  それで後上君の一日は朝の走りから始まっていた。朝イチでランニングすることによってテンションを上げるという。そういう姿を見て、4人のバランスをつかんでいきました」  そんなスクリーンに映らないシーンを、山本は左目のみで見続けた。垢すり職人・康助は、右目にアイパッチを施しながらスーパー銭湯で働くというキャラクター設定だったからだ。 写真提供/東映ビデオ
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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