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借金500万円男。派遣先のタコ部屋暮らしを振り返る

タコ部屋は親密になれる

 前回はタコ部屋だったのでより親密な関係になれた。何気ない会話の中から少しずつ本当のプロフィールが漏れ始め、途中でめんどくさくなって 「実は今東京に住んでて」  とノーガードの会話にすり替わる。こうした心温まる事象が頻発し始めるのが3週間くらい経った頃だ。よく行くラーメン屋、学生時代の武勇伝、仕事中の会話が尽きると人は過去の話を始めたりする。  この段階になると、誰が何のコンプレックスを抱えているかもわかるようになる。大学受験や同級生の文句しか言わない人、前の職場の悪口ばかりになる人、20代の頃の恋愛遍歴を何度も話す人。  人間は脆い。ここでフンフンと話を聞くか、興味津々で驚くか、露骨に嫌がるか、もしくはもっと凄い内容のマウントをとってしまうかで対象との関係性は大きく分岐する。僕は他人に寄生して生きているので興味が尽きない!という反応ばかりしてしまうが、後腐れなく終わりたいなら、この人生回顧録ラリーの回数が平等になった段階で、 「そろそろ戻りましょうか」  と言えばいい。勇気の要る言葉だが、言われるほうはさほど気にならない。この世は言わないよりも言ったほうがいいことのほうが多い。言わないほうがいいことは「ホームレスと生活保護は必要ない」とか、そのくらいだろうか。あれはなんだか銃の試し打ちをされているような気持ちになった。

メシの約束をするも……

 話が多少逸れてしまった。そういうわけで今回のタコ部屋労働ではほとんど全てのメンバーと仲よくなった。LINEも交換した。SNSだけは絶対に教えなかった。 「東京に戻ったら一緒に飯でも行きましょうね」  と果たされない約束もした。この先互いに連絡することがあるとすれば、その時はもう友達じゃなく詐欺の被害者と加害者になっているかもしれない。  東京に帰ってくるとタイムスリップしたような気持ちになる。パチンコ屋には知らない台が並び、懐は多少温かくなっている。頑張って働いたんだから、初日は少し贅沢をしても許されるだろうと、少し高い夕飯を食べる。ここまでが短期・中期労働の楽しみだ。帰るまでが遠足だし、終わって少し遊びすぎるまでが退職だ。
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友人宅でゴロゴロと
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フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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