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借金500万円男。15時間の単純労働という「精神と時の部屋」で悟りを開く

―[負け犬の遠吠え]―
ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。 それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。 「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は58回目を迎えました。  今回は派遣先で哲学者になったお話です。

新しい派遣先での人間関係

工事現場 日が長くなった。名も知らぬ同僚と知らない土地で夕飯を探していると、暗くなる前に店が閉まり始める。  まだ日が出ていると油断していたが、すでに19時を回っていた。気がついたら1日が終わる。夏はいつだって間に合わない。  単発や短期のアルバイトにおいて、知らない人とすぐに打ち解ける能力はかなり重要になってくる。最初の数回のうちは「短い期間だから誰とも関わらなくてもいい」と思っていたが、蓋を開けてみれば結局人間関係は存在する。  パチスロやポーカー、株や転売もそうだ。情報を得るため、自分の居場所を守るためには外面を大事にしなければならない。それぞれが一匹狼のつもりでも、集まればコミュニティになってしまう。 「以前は何の仕事をしていたんですか?」 「会社員ですね、コロナを機に退職しまして……」 「私もです」  この一年、短期の現場で何度となく繰り返してきた会話だ。ほとんどが嘘である。僕が働くような場所は求人サイトで調べたくらいでは出てこない。歴戦の派遣戦士のコミュニティの紹介でなければ潜り込めない。

派遣同士の哀しき「差し合い」

 お互いにそれを知りつつも、さも派遣アルバイト初心者のように振る舞いながら相手の出方を伺う。一度「出来る」ことが判明したが最後、共に動いている間の責任は全て持たなくてはならなくなる。  派遣の上級者同士のこうした空中戦は格闘ゲームの「差し合い」に似ている。例えば親しくなって相手の素性を知り、経験者であることを吐かせることは「差し返し」と呼んでいる。 「この機械の動かし方は知ってますか?」 「いや、説明は受けたんですが触ったことはなくて……」  ガソリンで動く発電機を前に、お互いに全く引かない。紐を引いてスイッチを入れるだけだ。  この会話の本質は責任の所在のなすりつけ合いだが、目の前で起こっているのは初めてテクノロジーを前にした猿同然の不毛なやり取り。この会話を雇い主から見られでもすれば、すぐに使えない人間と判断されて次の仕事を失うだろう。その前にどちらかが折れる必要がある。 「とりあえず動かしてみますか、つけちゃいますね」  今回は僕が折れた。相手は「まさか知らないフリをしていたのか?(笑)」と言わんばかりにニヤついている。知らないなら手元をちゃんと見ろバカ。
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