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消えゆくストリップのいま。赤字覚悟で残すことを決めた劇場の思いとは?

動かない時間もある。裏路地にひっそりと佇む

昭和遺産

「ストリップは大人の社交場。うちの劇場で出会って結婚した男女もおるんよ」と嬉しそうに話す木村氏

 JR小倉駅南口そばの雑居ビル街の一角に「A級小倉劇場」はある。出迎えてくれたのは経営者の木村恵子氏。40年近く劇場を見守ってきたその穏やかな眼差しが、閉館の話題に触れると、怒りを含んだ哀しい色合いに変わった。 「コロナ前は赤字にならない程度の売り上げはあったんだけどね。昨年4月の緊急事態宣言で2か月休館。6月から感染対策を徹底して再開したけど、売り上げは前年の半分以下。客足は戻らんね」

閉館を惜しむ声が殺到

 性風俗にあたるストリップは、持続化給付金の対象から外れた。 「40年近く税金を納め、30年以上、売り上げの一部を社会福祉協議会に寄付してきた。それでこの仕打ち。いまだに根強く残るストリップに対する偏見に心が折れてしまってね。それで閉館を決めたんよ」  だが、昨年末に西日本新聞(11月7日付)が「閉館すること」を報じると、「会社帰りに立ち寄れる居場所が失われる」「大人の社交場をなくさないで」といった閉館を惜しむ声が殺到。寄付を申し出る人もいたという。「コロナ前と同じ客足は見込めないけど、恩返ししないとね。街中に宣伝カーを走らせているよ」と、木村氏はファンの力に押され、赤字覚悟で劇場を残すことを決めた。
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「ストリップの灯は消さへんよ」
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坂田哲彦氏オススメ ストリップ劇場BEST5

A級小倉劇場(福岡)
北九州市の小倉で多くのファンに支えられて復活を果たした。

アタミ銀座劇場(静岡)
温泉街にあり、絶滅に瀕している花電車芸を堪能できるのが魅力。

あわらミュージック劇場(福井)
50年もの間、温泉街を訪れる客たちを沸かせ続ける日本海の雄。人気アニメのコスプレ、エアリアル(空中)ショーも必見。

蕨ミニ劇場(埼玉)
商店街に溶け込む街の喫茶店のような存在。

晃生ショー劇場(大阪)
53年の歴史を誇る老舗で、新人踊り子がたくさん巣立つ名劇場

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