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原発による死者は火力発電よりずっと少ないという事実【藤沢数希氏】

◆マネーな人々 今週の銭格言
【選者】人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏

関西電力は保有する原子力発電所11基がすべて停止し、火力発電所はフル稼働状態が続く。その結果、石油や天然ガスなどの燃料費が増加。そんななか、橋下徹大阪市長は、関西電力の株主総会で原発全廃を求めるという

⇒【前編】はこちら http://nikkan-spa.jp/180452
「橋下大阪市長の原発全廃発言は暴論だ」

 反原発の識者は、地元対策費などを考えると原発は火力発電所よりも高いと言っている。僕はあらゆるコストを考えても原発がやはり一番安いと考えているが、前提の置き方によっては、化石燃料を燃やす火発のほうが安くなることもありえる。しかしこの発電単価の話と、今そこにある原発再稼働の話はまったく別物なのである。なぜならば、原発の発電コストのほとんどが発電所の建設費で、核燃料代は発電コスト全体の1割にもならないからだ。

 一方で、火力発電の発電コストのほとんどが化石燃料代だ。原発はすでに日本中に造ってしまったので、今からの発電コストを考えるときに、この分の建設コストは考えなくていい。だって、すでにあるわけだから。これは経済学でいう「サンクコスト」だ。つまり、原発がすでに日本中にある状態で、将来のキャッシュフローを見れば、原発はそれこそタダで電気をつくれるようなものなのだ。それを止めて、中東から化石燃料を大量に買っているのだから、電力会社は膨大な赤字を垂れ流しているのである。あの電力株が減配するのも時間の問題だろう。この年間4兆円にも達する余分な化石燃料代は、最終的には絶対に国民負担になる。

 では原発は、国民の命を危険に晒して、経済を優先させるための技術なのだろうか? 答えは否だ。WHOによると年間100万人以上が大気汚染で死亡しており、その半数が車の排ガス、3割程度が火力発電所からの煤煙が原因だと言われている。チェルノブイリ原発事故で死亡するとされる4000人を考慮しても、原子力の単位エネルギー当たりの死亡者数は、火力発電所に比べて圧倒的に少ないのだ。原発に関しては、感情論を排した冷静な議論が必要だろう。

【今週の数字】
原発停止で余計にかかる化石燃料費
年間4兆円

現在、稼働している原発は、柏崎刈羽原発6号機と泊3号機の2基だけで、これらも1か月以内に定期点検で停止する。老朽化した火力発電所をフル稼働しており、その追加的な化石燃料費だけで年間約4兆円

『「反原発」の不都合な真実』

過去の統計から1TWh当たりの死亡者数を計算すると、原子力は0.03人だが、火力は21人が犠牲に。同じ電力量なら必要な命が少ないほうが得だ。出所:『「反原発」の不都合な真実』(新潮社)

【藤沢数希氏】
欧米の研究機関にて計算科学、理論物理学の分野で博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。主宰するブログ「金融日記」は月間100万PV、ツイッターのフォロワーは6万人に及ぶ。最新刊『「反原発」の不都合な真実』(新潮新書)が発売中

「反原発」の不都合な真実

『反原発』を冷静に論ずる




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