更新日:2022年01月19日 14:44
エンタメ

武田真治、調子に乗っていた“CMキング”時代と『めちゃイケ』への深い感謝

過去に書いたメモの「言葉」にフォーカス

メモ

武田さんが書き続けてきたというメモの数々(撮影/菊岡俊子)

──本書は、武田さんが過去に書き残した膨大なメモから、厳選された言葉の数々が並べられているのが特徴です。自分を奮い立たせるため、頭に浮かんだ言葉をサッと書きつけては壁に貼っていたとか。本のタイトルも、このメモの中から採ったんですよね? 武田:そうです。このメモを僕が締め切りギリギリになって引っ張り出してきてしまったせいで、刊行が遅くなってしまったとも言えます……。  実は2020年の段階で、本書の半分以上(書き下ろしエッセイや読者から募った質問に対する回答をまとめた「PART 2」の部分)はほぼ仕上がっていたんです。ただ、それだと単なる回顧録にしかならない気がして。芸能人として僕のことを好きでいてくれる人だけが手に取り、仮想現実に浸る……みたいな本でいいのかなと。  塩って、誰にとってもしょっぱいじゃないですか。胡椒も誰が食べてもピリッとする。そんなふうに、誰が手にしても何かしら心に引っかかって、読んでくれた方の行動や考え方にもしかしたら影響を与えられるかもしれないもの、参考にしてもらえるかもしれないものがつくりたいと考えたんです。  そこで、僕が過去に書いたメモから抽出した「言葉」にフォーカスすることを思い付きました。この方向での制作途中、純粋に言葉の強度だけで勝負できる本になるのではないかと勘違いして、僕の写真を一切載せないなんて案も出たくらいで(笑)。 ──前著では武田さんの息を呑むほど鋭利な肉体が写真で示されていたのに、今回の本はビジュアル要素が妙にあっさりしているなと思っていたんです。自然な感じのポートレートが数枚載っているだけなので。 武田:最終的には、僕の顔が見えることで「武田ができるなら、自分も筋トレやってみようかな」「武田のこと、少しは信じてみるか」と思ってくれる人もいるだろうということで、顔が見えるこういう形になりました。  今回の本では自分の低迷期というか、心身ともに弱り切っていたドン底のころの自分を正直にさらけ出したいと考えていたので、肉体を披露して威圧感を与えるようなことはしたくないとも思っていました。

仕事が次々とやってくる状況に飲み込まれ、勘違い

──「低迷期」というお話が出ましたが、ドラマやCMに引っ張りだこだった人気絶頂期の20代半ばごろ、顎関節症を患うなど体調を崩された話が本に出てきます。仕事も減らして、引きこもりがちになり、長い長いトンネルの中で悶々と過ごすような状況に陥ったとか。 武田:ええ。17歳で雑誌のコンテスト(第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト)で優勝して、北海道から上京。ありがたいことに2年ほどで仕事にも恵まれるようになり、大した苦労もないまま、ハタチそこそこで世間的に顔と名前を覚えてもらえるようになりました。  振り返ってみれば、当時の僕は人の話をまったく聞いていなかったと思います。若くして周囲からチヤホヤされて、休む間もないくらい仕事が次々とやってくる状況にあっさり飲み込まれ、勘違いをしました。気にかけてくれた誰かが何かを言ってくれても、「あー、はいはい」「まぁ、そういう話はいいから」といった態度でしたからね。  そういう態度が1~2年も続けば、周囲も「ダメだ、こいつ」「もう知るか」となって、何も言ってくれなくなる。そうして気が付けば、誰も怒ってくれないし、褒めてもくれない状況になっていたんです。
次のページ
療養中も唯一、継続した『めちゃイケ』出演
1
2
3
4
上には上がいる。中には自分しかいない。

ふがいない自分を支えてくれたのは、「言葉」と「筋トレ」だった。

おすすめ記事