お金

借金500万円男。有馬記念で負けて高級ブランド店でバイトをする

長袖を選んだワケ

 この仕事は暖房が効いた屋内で行われたため、それぞれシャツが支給されていた。長袖と半袖のどちらかを選んで借りるわけだが、僕はたまたま長袖にしていた。進化人間たちは皆半袖で、案内のために動き回るので冬なのに暑かった。 「長袖暑くないですか?」  性格まで良い進化人間が尋ねてくる。その日だけのアルバイトなのに彼は「ダルい」の一言も言わなかった。返事をしようとすると必然的に顔を上げることになる。 「あ〜・・・これ、ね・・・」  爪痕を残したい僕は、もう限界だったのかもしれない。 「長袖じゃないとダメっつーか、半袖は着れないからね。あんまり深く聞かないでよ(笑)」 「あっ、なるほどです!すいません!」  直接言わなかったが、僕は暗に「タトゥーが入っているから」という嘘を吐いてしまった。顔で負け、身長で負け、英語力でも負け、それでも何か勝ちたかった。

入っていないタトゥー

 こんな一期一会のアルバイトで、よりにもよって中学生でも言わないような嘘を吐いてしまった。直接「タトゥー」と言わないで相手の想像に委ね、だがしかし文脈上確実にタトゥーのことを暗示してしまった。  その後、彼らの中で僕の腕が話題になったかはわからない。会話を避け、誰とも挨拶をしないままバイトを終え、そそくさと家路についた。  帰りの電車の中、張る必要の無かった見栄と忌々しいこの口から飛び出した下らない嘘が頭の中でずっとリフレインしていた。  安全ピンよりは深い傷ができただろう。  もうオシャレなイベントスタッフには応募しない。 文/犬
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩
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