お金

借金500万円男。有馬記念で負けて高級ブランド店でバイトをする

―[負け犬の遠吠え]―
ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。 それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。 「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は71回目を迎えました。  今回は高級ブランド店でバイトしたお話です。

高級ブランドのイベントスタッフへ派遣される

高級ブランド

写真はイメージです(文章の内容とは関係ありません)

 年末年始は全てがいつもと違う。  バスはやたら高いし、いつもの時間にゴミは出せないし、普段人なんていない神社が賑わっている。サラリーマンたちの多くは私服で遊び回り、街はいつもより人が多い。  そして学生やフリーターはこの機会を逃すまいと、年末年始にしかできない割高なアルバイトに応募する。そして社会がまたいつも通りに動き出す頃、一周遅れでスキー場なんかに遊びに行くのだ。  フリーターの僕は、高級ブランドのイベントスタッフをした。  クリスマスの前から年明けにかけて二週間近く行われるイベントに、フル出勤できると応募した。なぜなら友達から借りた金を返す必要があったからで、ついでに年末の有馬記念で負けたからだ。  イベントスタッフに応募した後、派遣会社から顔写真を送るように言われた。「なるべくイケメンに見えるように撮ってください」と指示を受け、確かに高級ブランドのスタッフはスラっとしたイケメンであるべきだと納得すると同時に、冗談みたいな重さの憂鬱がのしかかってきた。  僕は眉毛を整えたことも自分で服を買ったこともない。オタク特有のオーガニック・ママコーデでここまで乗り切ってきた僕にとって「イケメンに見える写真」とは蓬莱の玉の枝や火鼠の皮衣だった。おおかぐや姫よ、この時代の派遣会社に勤めていたとは。  イケメンに見える角度を探して、人生で一番たくさん自撮りを撮ったかもしれない。髪にジェルをつけ、正面、横、斜め、上、下とあらゆる方向から「イケメンの要素」を探した。  1時間近い研究の末、斜め上から見下ろす形が一番イケメンに見えると結論付け、我が子を送り出すような気持ちで写真を送信した。

昔のホストのような髪型でバイト先へ向かう

 元々提案された二週間のうち、実際にシフトに入ったのは二日間だった。「希望をたくさん出してくれたのに申し訳ない」と謎の謝罪までされてしまった。並べられる写真の中、明らかにレベルの低い顔がやる気のあるシフトを出しているのを見て頭を抱える派遣会社のスタッフの顔が浮かぶ。  どうせなら0日にしてほしかった。情けが心の傷に障る。すでにちょっと行きたくなくなっていたが、残酷な優しさと貧困に挟まれていたので逃げる選択肢は無かった。  当日の朝、慣れない髪のセットをした。ジェルで前髪が昔のホストみたいになったが、自分の顔を見すぎてゲシュタルト崩壊を起こした僕は「カッコいい」「ダサい」が完全にわからなくなり、時間ギリギリまで髪をいじくり回してベタベタの頭で集合場所に向かった。
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張らなくてもいい見栄を張る
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フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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