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予測通り発生し、予測を超える規模となるオミクロン株の第6波

これからどうなるか、どうするか

 まだデータの蓄積が足りないので国際間の統計比較による推測が多く入りますが、南ア、英国、欧州、合衆国の先行事例と沖縄県の国内先行事例から、ο株Surgeは、発生から4週間で極大値に達すると予測されます。  また、謎々効果による抑止効果を1/10とすれば最大値は百万人あたり日毎新規感染者数300〜500ppmと予測出来ます。これは昨夏のδ株Surgeを大きく上回る値です。但し、沖縄県で1000ppmを超えており、広島県も1000ppmに迫っていますので、一部の都道府県では米欧並みの1000ppmを超えるまで日毎新規感染者数が増える可能性があります。  筆者は、現在極大値500ppm前後を採用して予測しており、これは最も悲観的な2000ppmより大幅に引き下げています。引き下げた理由は、海外の先行事例から1月末までには多くの都道府県で極大値に達し、減衰に転じると予測しているからです。  本邦でο株Surgeは、δ株の10倍の速度で拡大が進んでおり、人間の対応が全く間に合いません。これは海外でも同じで、あっと言う間に交通機関や医療機関の労働者が感染し病欠となり、労働力の確保ができないということで社会と医療が機能不全を起こしています。  このため合衆国疾病予防管理センター(CDC)がクリスマス明けに突如、無症状者は陽性判定後5日間で隔離を止めるという隔離ガイドラインの変更を行いましたが、これには医学的、科学的根拠が無く、CDCは激しい批判に晒されています。  このガイドライン変更は、科学や医学的根拠の無い政治決定として合衆国では袋だたきですが、合衆国政府は、僅か数週間でそこまで追い込まれたと言えます。執筆時点で合衆国の1/4の病院では、労働力の確保ができず、危機的状態であると報じられています*。合衆国では、これまでに生じなかった規模で感染による労働力の枯渇が生じており、クリスマス休暇には1日千便以上の航空便が欠航となり、1日5千便近くが遅延するなど現在も物流と人流が大混乱し、学校も大規模な労働力問題が生じています**。 <*Coronavirus US: Nearly a quarter of hospitals are reporting a critical staff shortage as Omicron drives a rise in Covid-19 cases 2022/01/09 CNN> <**Omicron surge leading to worker shortages across nation 2022/01/11 CNN>  ο株Surgeは、短時間で社会の機能を破壊するという非常に厄介な特徴を持ちます。政治的に何らかの決断をせねばならないことも事実です。  当初の、ο株はたいしたことは無いという風聞に反して、既に合衆国では医療が強い圧力を受けており*、死者数も急増しています。またο株Surgeの特徴として子供が多く感染し、入院しています**。 <**Covid News: U.S. Hospitalizations Break Record as Omicron Surges 2022/01/10 The New York Times> <****Covid Updates: Number of Hospitalized Young Children Who’ve Tested Positive Is Jumping, C.D.C. Says 2022/01/07 The New York Times>  また感染者はCOVID-19 Long-Hauler(長期COVID)となり、生活の質が大幅に低下する危険があり、これをトロイの木馬に例える疫学者も居ます
 ο株Surgeは、日本などではδ株の10倍の速度で拡大しており、これまでの時間感覚では対応に失敗します。筆者は時速80キロの通勤電車がδ株Surgeであり、時速800キロのジェット旅客機がο株Surgeの速度であるとよく評しています。  その一方で、1月下旬から2月上旬には極大から順次減衰に転じて、3月にはかなり落ち着くのではないかと筆者は予測しています。  2022年1/11以降、大都市圏では数百人程度の集団でも空気感染の可能性が生じますので、KF94などの高性能マスク着用と換気は必須となり、勿論通勤電車でも換気と高性能マスク着用は必須となります。  また100人規模の大人数の居る屋内での飲食も感染の危険がありますので寒いですが入試などでは、厚着をして屋外で社会的距離を確保の上で飲食すべきでしょう。勿論、2月中旬までの一月はリモート就労であることが強く勧められます。  極大期となる再来週以降、二月上旬までは、数十人規模の不特定多数の人で構成される集団は原則として避けるべきです。  筆者は、大学入試共通試験と国公立大2次試験はかろうじて実施可能と評価していますが、私大入試は労働力確保と受験生の欠席率で非常に厳しいことになると考えています。  一方で、現在の統計を見る限り、δ株以前のように3ヶ月間社会が混乱することは無く、その半分の期間で済むのではないかと考えています。  ワクチンパスポートは、ο株では全く無意味です。第一世代COVID-19ワクチンは、ο株に対して感染回避有効性が非常に低く実用の域で無いことが分かっています。一方で、最新のCNN報道によると合衆国の統計では、入院者の大部分は非接種者という結果が出ており、重症化回避の有効性は対δ株よりは大きく劣っていても実用の域にはあるようです。  このようにο株Surgeでは、米英欧の事例を本邦の2週間先行事例として大いに参考に出来ます。これから1カ月、海外情報と統計に学び、できる限り用事は3月以降に延期して閉じこもることがο株Surge対策の基本です。  そしてこれが大切です。「ウイルスには、人間の都合など関係ない」。  希望的観測は一切捨て去り、防疫は、数字(統計)に始まり数字(統計)に終わります。数字の裏付けがない風聞は相手にする必要はありません。 <文/牧田寛>
まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?

急速な感染拡大。医療崩壊。
科学者視点で徹底検証!

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