──現在はプロのみならず、ジュニアを含む多くの“プロの卵”を指導しています。聞くところによると、指導料は一切取っていないとか。 三觜：プロ志望の子たちへの指導は、いわば先行投資です。日々の合宿や移動の費用で年3000万円くらいは自分の持ち出しです。ですが、選手がちゃんとプロとして稼げるようになったら、稼いだ賞金から何パーセントかをいただく。10％回収できれば成功だと思っているので10人に1人成功すればいい。そう考えないともちません。もちろんジュニアはタダ。これは一生そのままです。 ──教え子の結果が出なければ、ひたすら赤字が続く、と。 三觜：本来ならプロは見ずアマチュアに重心を置いたほうが楽だし儲かります。持ち出しがなく実入りがいいですから。でも、「自分が生きる価値って何だ？」と考えたときに、僕が日々勉強してきたことが誰かの役に立つところにある気が最近はしているんです。 自分が歯を食いしばって勉強して手に入れた知財が、どこかで誰かの役に立つ。「自分のため」より「どこかで誰かのため」のほうがずっとモチベーションが高まるんですよ。僕はどうやらそういう生き方しかできないみたいで、実家に眠っていた小さい頃の写真を見ても、おんぶ紐で妹をおんぶしている写真ばかり。子供のときから誰かの面倒を見ることが身についているみたいです。 ──YouTubeの反響についてはいかがですか？ 三觜：当初、僕は全く興味がなかったけど、現在「MITSUHASHI TV」のプロデューサーをやっていただいている方に「億以上を稼ぐプロを指導するスキルがあるのに、教える側が稼げていないのはおかしい。ティーチングプロの価値を高めるためにも、学んできたことをアウトプットするべきだ」と説得されて始めました。 最初は登録者数が増えなかったけど、プロを教えている合宿の動画を出したらバズりました。当時はプロゴルファーがガチでレッスンを受けているコンテンツがなかったからでしょうね。とはいえ収入的にはこれだけではとても賄えません。先ほど言った活動費に年間3000万円くらいかかるので、3000万円稼いでも赤字。月250万円は経費にかかります。だからそろそろ回収しないといけないんですよ。
──と言いつつ、最近も20代限定の無料レッスンなどやっていますよね。 三觜：そうですね（笑）。これはゴルフ界の裾野拡大でもありますが、ダイレクトにビジネスにつながる世代を取り込んだほうがゴルフ業界にとっていいと思って始めました。タイムリーにお金になると思うので、本当は業界を挙げてやってほしいこと。僕が1年間無料でサポートすればアピールになると思ったんです。 ──ゴルフ界以外でもビジネスを手がけているとか？ 三觜：じつは山ほどやっていて、投資している会社がいくつかあります。稼いだお金はそうやって全部使っちゃうんです。僕、めちゃくちゃギャンブラーで、石橋を叩かないんですよ。オフは年に一日だけなんですが、大晦日に現金100万円持って公営ギャンブルに行って遊ぶのが唯一のオフ。とりあえずやって失敗したら、また考えればいいという性格です。チャレンジして痛い目にも遭ったし借金も抱えたけどそれでいいんです。 ──今後は何をやりたいですか？ 三觜：何をやりたいかなぁ。僕は先のことを考えないので。考えたのは20代の頃にジュニアスクールをつくったときだけです。目標を決めて、そのために今コレをやる、と考える人ってたくさんいるじゃないですか。でもその通りにはいきませんよね。だから目標を立てるって僕にとってはナンセンスで、今やれることを必死にやればいいんじゃないかと思っていて。僕自身、プロゴルファーになりたいと思っていたけど、今いる場所はちょっと違う。とにかく、ちょっと先のこと、1時間後にどうなっていたいか、みたいに常に半歩先までしか考えずに生きていますから。 ＝＝＝＝＝ 　気鋭のティーチングプロでありながら、誰よりもゴルフ界の今をビジネスという側面も絡めながら見つめる三觜プロ。その視点こそが、“異端児”たるゆえんなのだろう。 2/15発売の週刊SPA！のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです。 取材・文／岸 和也　大格宗一郎（本誌）　撮影／相田克己みつはしよしかず●’74年、神奈川県生まれ。日本プロゴルフ協会認定ティーチングプロA級。ジュニア育成、ツアープロコーチとしても活躍。YouTubeの「三觜喜一MITSUHASHI TV」は登録者数41万人超