更新日:2022年03月04日 09:25
ニュース

森友事件で自殺した赤木俊夫さんの妻・雅子さんに、落語家の桂佐ん吉さんが送った手紙

赤木俊夫さんが書いたアンケートが見つかった

赤木俊夫さんのメモ帳の、2017年7月のページ

赤木俊夫さんのメモ帳の、2017年7月のページ。左下赤線部分には「病気休暇」、右上のオレンジ線部分には「桂佐ん吉独演会」の記載がある

 2020年3月18日、赤木俊夫さんの「遺書全文公開」の記事が『週刊文春』に掲載された。俊夫さんが死の間際に書き残した「手記」と題するパソコンの文書や、手書きの遺書を、妻の赤木雅子さんが全文公開。同じ日に国などを相手に裁判を起こした。財務省の公文書改ざん事件を世間に改めて知らしめた決定的なできごとだった。  その日の『週刊文春』のグラビアページには、俊夫さんのメモ帳の内容が掲載されている。2017年7月20日、公文書の改ざんを苦にした俊夫さんがうつ病で休職したことを示す「病気休暇」という文字がある。  そして同じページの右上、7月1日のところには「桂佐ん吉独演会」と書かれている。この画像が知人のフェイスブックに載っているのを佐ん吉さんが見て気づいた。 「もしかして赤木俊夫さんは独演会に来てくれていたのでは?」  過去の独演会の資料を調べたところ、この年の記録はなかったが、前の年、つまり改ざんの1年前、2016年3月17日の独演会で俊夫さんが書いたアンケートが見つかった。 「グイグイ力をつける佐ん吉氏を影ながら応援しています。NHK新人落語大賞受賞おめでとうございます」
赤木俊夫さんが桂佐ん吉さんの独演会で書いたアンケート

赤木俊夫さんが桂佐ん吉さんの独演会で書いたアンケート

 この時の独演会は「NHK新人落語大賞受賞記念」と銘うって開かれた。だからお祝いの言葉を書き添えたのだろう。ひいきの若手噺家への心遣いが感じられる。赤木俊夫さんは趣味が豊かで幅広い人だった。書道、建築(安藤忠雄さん)、音楽(坂本龍一さん)への傾倒が知られるが、実は落語も大好きだった。 赤木俊夫さんが書き残していた、落語NOTE 何でも記録をつける“メモ魔”の俊夫さんは、鑑賞した落語の記録を「落語NOTE」として書き残していた。ノートに何冊分もある。2012年10月3日に訪れた寄席の記録を見ると、10年前のこの時点で早くも佐ん吉さんの名前が見える。  その後も繰り返し佐ん吉さんの独演会に通っていたことが、残っているチケットの半券でわかる。長年にわたり芸を見続けているから「グイグイ力をつける」という言葉がすんなり出てくるのだろう。芸事に深い愛情を持っていたことがうかがえる。

佐ん吉さんから赤木雅子さんへの手紙

佐ん吉さんから赤木雅子さんへの手紙

佐ん吉さんから赤木雅子さんへの手紙

『週刊文春』に記事が出て6日後、佐ん吉さんは俊夫さんのアンケートとともに、手紙を書いて妻の赤木雅子さんに送った。許しを得て一部をご紹介する。 「(アンケートについて)温かく見守って下さっていたありがたいお客様だったと何度も見返しつくづく思います。手記を読ませていただいて私が思っていた以上に大変な絶望感や恐怖感苦悩があったんだと胸がつまりました。  にもかかわらず今日の(2020年3月24日の国会での)質疑応答を見ておりますと、(安倍)首相をはじめ連中の誠実さのかけらもない態度に腹わたが煮えくり返る思いでした。悪人が正しく粛清されるように願ってやみません。これから裁判もあり大変なご苦労がおありかと思いますが、必ずご無念が晴らされるようにお祈り申し上げます」  雅子さんは返事を書いた。 「夫にもらった趣味の落語を、これからは私が夫の分まで楽しんでいきます。佐ん吉さんの応援でパワーをいただきました。これからも粘り強く再調査をお願いしていきます」
次のページ
近畿財務局がある大阪の官庁街で偶然の再会
1
2
3
おすすめ記事