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森友事件で自殺した赤木俊夫さんの妻・雅子さんに、落語家の桂佐ん吉さんが送った手紙

―[取材は愛]―

天皇誕生日に、落語の独演会へ

桂佐ん吉さん(本人のTwitterより)

桂佐ん吉さん(本人のTwitterより)

 2月23日、天皇誕生日。上方落語の定席「天満天神繁昌亭」で、落語家・桂佐ん吉さんの独演会が開かれた。桂米朝一門に連なる新進気鋭の噺家だ。  落語は本題への導入部として「枕(まくら)」という短い話を語る。お客様の心をつかむために重要なパートだ。この日は、2月は客の入りが悪いことから語り始めた。 「2月8月はお客様の入りが悪いというのが商売の常識でして、この小屋(繁昌亭)も2月はお客様がなかなか入らないから、私どもが借りる賃料も安くなるんです。そこを狙って私の独演会はこの時期を押さえる訳ですけど(笑い)、実は秘密があるんです。  ご当地はすぐ南隣が大阪天満宮、つまり天神さんですね。天神さんといえば菅原道真公で、梅の名所。今が盛りと咲き誇っておりますから、梅見のお客様が大勢訪れる。するとこの寄席も目に入って『ちょっと寄ってこか』となりますから、例年ですと安い賃料で労せずして梅見のお客様が当日に見込めるというわけでございます(笑い)。ですが、今年はあいにくコロナの影響がございまして、あてが外れてしまいました(笑いと拍手)」
天満天神繁昌亭

天満天神繁昌亭

 実際には厳しい寒さにもかかわらず、かなりの客入りがあったのだが、例年ならそれ以上に、ということだろう。続いて話題は天皇誕生日に。 「きょうは天皇誕生日でございますね。令和の前、平成は12月23日が天皇誕生日でした。そして実は私の誕生日でもあるんです。だから私は物心ついた時から自分の誕生日というと祝日で、世間の皆さまがお祝いしてくださっているようで、ありがたく感じておりました。  ところが令和に変わって天皇誕生日も変わりまして、前の天皇誕生日も何らかの形で祝日に残るんじゃないかと思っていたんですけど、何にもない、ただの平日になっちゃいましたね。それがすごくショックでございました(笑い)」  確かに平成の前、昭和の天皇誕生日は4月29日で今も「昭和の日」という祝日だ。「平成はなぜ?」という疑問を自分の誕生日にからめて笑いにしている。

桂佐ん吉さんと赤木俊夫さんのご縁

大阪天満宮では、梅が満開だった

大阪天満宮では、梅が満開だった

 ここから噺は本題に入る。演目はまず『桜ノ宮』。大阪の花見の名所。梅の次は桜というわけだ。後段、花見の席での大立ち回りのあたりからエンジンがかかり、のってきたのが伝わってくる。噺と噺の合間に、楽屋での弟弟子とのぶっちゃけ話を披露したのもいいアイデアだ。  そして最後の『浮かれの屑より』。屑をより分ける仕事を任された居候が実は芝居好き。仕事場の隣が稽古屋で、唄や踊りの稽古で三味線や太鼓が鳴り響くたびに仕事が手につかず…、という設定の噺で大いに笑わせてもらった。  終演後、アンケート用紙に私はこのように書いた。 「俊夫さんが記していたようにグイグイ力をつけているのでしょうね。これからも楽しみにしています」  ここで書いた「俊夫さん」というのは、赤木俊夫さんのこと。財務省の公文書改ざん事件で命を絶った、近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんだ。なぜ佐ん吉さんと俊夫さんが結びつくのか? そのご縁を紹介する。
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赤木俊夫さんが書いたアンケートが見つかった
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