更新日:2022年07月09日 18:16
お金

相次ぐ食料品の物価上昇問題。政府のインフレ対策は大丈夫なのか

不況と物価上昇が同時に押し寄せる未来も

井上智洋氏

『「現金給付」の経済学 反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書)の著者で、駒澤大学経済学部准教授の井上智洋氏

 また、井上氏は「インフレには、“デマンドプル型”と“コストプッシュ型”があります。デマンドプル型は、消費意欲が高まるなどの需要増大によるインフレです。コストプッシュ型は、燃料費や原材料の値上がりなどによって起こるインフレです」とインフレに関する説明を始める。 「デマンドプル型の場合、賃金上昇によって消費意欲が増加して、私達の生活が豊かになることが期待できます。しかし、今の日本のインフレは残念ながらコストプッシュ型です。コストプッシュ型は、コストの値上がりに対応しなければいけないため、賃金上昇は当然望めません。むしろ直接庶民の暮らしを逼迫させるだけでなく、不況とインフレが同時発生する“スタグフレーション”をもたらす可能性があり、とても危険です」  そして、「スタグフレーション化を防ぐためには景気回復を優先すべきです」と今すべき提言を示した。

減税や現金給付は必須

 日本が危機的状況に陥ろうとしている現状が見えてきたが、どういった政策であればこの危機を脱することができるのか。 「既に政府によって行われたガソリンの元売り会社への補助金や、野党が提案するガソリン減税といったエネルギー価格高騰の抑制を企図した政策は、とりあえずの混乱を防ぐ役割を果たせるとは思うのですが、石油が供給不足である以上、どうあがいても値上がりは抑えきれないです。値上がりを根本的に解消しようと思ったら、石油の供給を増やすか、需要を減らすかしかありません。例えば、石油備蓄を大量放出して供給を増やせば根本的な解決ができるわけです。 しかし、これは 国家安全保障上の最終手段ですので、日本ではそんな大量にはできません。供給を増やせないなら需要を減らすしかないわけで、なるべく公共交通機関や自転車を利用してもらうとかぐらいしか手立てがありません。 そのため、今政府は直接エネルギー価格の値上がりを解消することよりも、減税や現金給付によって国民生活の負担を緩和するとともに、景気悪化を防ぐことに力を注ぐべきです。しかし、現政権はそういった政策が欠けていると言わざるを得ません」
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フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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