更新日:2022年07月21日 11:59
スポーツ

サッカー日本代表を救うかもしれない、板倉滉の超高精度シュートブロック

少しの立ち位置のズレが失点に繋がる

 シュートブロックの際、この「①ゴールの枠の端から消す」「②穴を作らない」のどちらか一つでも達成できなかった場合、守備側の失点の確率は一気に高まる。  先月の4連戦の中でも、この状況を作れずに失点してしまった場面があった。6月10日にノエビアスタジアム神戸で行われたキリンカップ準決勝、対ガーナ代表戦(4-1で勝利)。前半44分、山根視来のパスミスから自陣でボールを失い、ジョルダン・アイェウにゴールを許したシーンだ。  シュートの瞬間、ブロックに入った吉田麻也は片膝をL字に折り、股下をケア。②の「穴を作らない」ブロックを形成した。しかし、ブロックを形成した位置は相手の正面。真ん中のコースは消せていたが、ゴールの両端へのシュートコースは空いていた。  こうなると、せっかくブロックが入ってはいるものの、GKが守らなければならない横幅は7.32mのまま変わらず、どちらかのサイドを重点的にケアするポジションを取ることができない。それどころか、真ん中に味方が居てしまうことでボールとDFとGKが一直線上に重なってしまう状況が生まれ、いわゆるブラインドになってしまうケースすらあるのだ。  左右どちらの端にも飛んでくる可能性がある上に、シュートを打たれる瞬間にボールが見えないとなると、GKとしてはかなり難しい状況になってしまう。ペナルティエリア外からのシュートであっても、反応するのは容易ではない。  この日ゴールマウスを守ったGK川島永嗣は上記した状況を見て、左右どちらの端に飛んできても対応できるよう、ゴールど真ん中とボールを結んだ直線上に立った。その状況下でできるベストなポジショニングだったが、惜しくも(攻撃側から見て)左隅に決められてしまった。

権田のビッグセーブの陰にあった超連動ブロック

 もちろん、この失点の場面はそもそものボールの奪われ方が悪すぎたのであり、急遽そのカバーに入った吉田に責任があるわけではない。自分の間合いで守備に入ることができたわけではないので、そこでのシュートブロックの精度を問うのは酷な話だ。  だが一方で、本大会でも似たような状況が起きることが十分想定されるのもまた事実だ。グループEを戦う日本の対戦相手はドイツ、コスタリカ、スペイン。強豪ドイツ、スペインとの試合では特にだが、長時間自陣に押し込まれることも想定される。また、前線からの相手の連動したプレスを前に自陣でボールロストしてしまう場面も、3試合ある中ではどうしても生まれてしまうだろう。そして仮に日本が理想とする試合展開に持ち込めたとしても、90分の中で決定的なシュートを打たれてしまう場面は必ずあるはず。そうなった際に、最後の局面でどれだけ粘れるか、具体的には相手の高精度なシュートに対してDFとGKが連動したブロックポジションを取れるかは極めて重要なのだ。  そのモデルケースとなるのが、前述した対ブラジル戦での板倉のプレーだ。4本のシュートブロックのみならず、それ以外の場面でもことごとくブラジルのシュートコースを限定。「①ゴールの枠の端から消す」「②穴を作らない」という基本に忠実なポジショニングは、GK権田をおおいに助けた。  また、このブラジル戦は板倉に限らず、チーム全体として高精度なブロックポジションを形成し続けられた試合だった。象徴的だったのが前半26分、左45°からのネイマールの鋭いシュートをGK権田が横っ飛びで弾き出したシーンだ。  直前のシーンでゴール前中央からルーカス・パケタがシュート。吉田がブロックして跳ね返ったボールが、ペナルティエリアすぐ外の左45°で待っていたネイマールの前に転がる。ネイマールはゆっくりとボールに向かい、ダイレクトでシュートを打つ構えに入った。  これに対して日本は、ゴールに向かって左から順に原口元気、板倉、長友佑都が少しずつズレてブロックポジションを形成。真ん中より左側の半分は完全にコースを消した。GK権田は中央でポジションを取りつつ、ニアが消えたことでややファー側に体重を乗せて準備。予測通りファーに鋭く巻いて飛んできた強烈なシュートを、見事横っ飛びでセーブしてみせた。  完璧と思われたネイマールのシュートを止めた権田のセーブに、会場がどよめく。権田のセーブ自体は間違いなく素晴らしかったが、連動して穴を作らずにニアを埋めた原口、板倉、長友のポジショニング、そしてグループとしての連動性も評価されるべきだ。  本大会においても、強豪国相手に勝点を拾うためにはこの最終局面での連動した守備は必要不可欠。その際、CBである板倉の高精度ブロックが最後の砦となる可能性はおおいにあるだろう。  本大会まで残り4か月。新天地での板倉の更なる活躍を祈ると共に、日本代表守備陣の連携が少しでも強化されることを願ってやまない。 取材・文/福田悠 撮影/藤田真郷 取材協力/川原宏樹
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129
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