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ユニクロ、円安でも業績絶好調の陰に“90年代名作格ゲー”の世界観

ヒントは”ストⅡ”。分散した海外出店でリスクを回避

ストリートファイター2

大人も子供も熱狂した『ストリートファイター2』

 むろん、円安は日本にとっては”悲鳴”でも、海外の場合、そうではありません。円安であれば現地通貨を日本円に変える(為替)場合に、その金額がより大きくなります。実際に海外ユニクロは円安の恩恵によって、為替で781億円のプラスを計上しています。  柳井会長は円安のデメリットを強調していましたが、海外市場において大きなメリットを得られるという形になっているのが現状です。もっとも、海外ユニクロの業績は現地通貨ベースでも事前の予測を上回っているため、そもそもの業績が好調であることが大前提にあります。  ユニクロは、2001年にイギリスに初進出し、その後数年で中国、アメリカ、韓国、香港と出店攻勢に出ました。海外進出当初は収益を上げられずに失敗と見られていた時期もありますが、それでも撤退せずに挑戦を続けた結果として今の成功があります。  この理由はどこにあるのでしょうか。  それは、地域を分散した出店ができていること。キーワードは、”ストⅡ”です。”  今から20年以上前、世界中のファイターが集う格闘ゲーム「ストリートファイターⅡ(略してストⅡ)」が大流行した時期がありました。  このゲーム内で拳を交えるキャラクターの出身国は、リュウ(日本)、ガイル(アメリカ)、ザンギエフ(ロシア)、春麗(中国)、ブランカ(ブラジル)、バルログ(スペイン)と、地域の違う国々です。  この”ストⅡ”を思わせる世界各国への出店戦略により、ユニクロは経営における地政学的リスクを軽減していたのです。  世界のアパレル企業において、ブランド管理を分散化する”ストⅡ戦略”は今や基本戦略として定着しています。「言うは易く行うは難し」ではありますが、ファーストリテイリングのお手本ともいえる海外出店は、他の国内企業においても参考になる点が多々あるのではないでしょうか。

とはいえ、海外市場だけではない強さの秘密

 また同社の決算において、もう一点注目したいのが販管費比率の改善です。  販管費比率は低ければ低いほど経済効率が良く、ユニクロは前年同期比で1.4ポイント改善して37%となっています。一般的にアパレル企業は50%前後であることが多いですが、同社では決算前から他企業よりも低かった数値がさらに改善されています。  改善できた理由として、店舗オペレーションの効率化があげられています。  アパレル企業において販管費比率と関係性の深いものとして企画・生産から販売までを統合するSPA(製造小売業)があります。ヒートテック、エアリズムの成功に見られるように、 ユニクロはSPAを効果的に導入している企業として知られています。SPAの成功が販管費比率に好影響をもたらしていることは言うまでもありません。  が、これに加えてユニクロはそこで歩みを止めることなく販管費を抑えた合理的な経営の追及を貪欲に続けていることが”勝因”であることが決算資料から読み取れます。  こうした経営努力によってパートタイム・アルバイトスタッフの時給が約3%アップし、今秋には時給10〜30%のアップが予定されています。 「好調な海外市場」というわかりやすい背景以外にも、足元の強化もユニクロ。それが同社の好調を支えていたのです。
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他企業は”ユニクロ化”できるのか?
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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