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「電波を飛ばして……」広岡達朗が明かす昭和プロ野球”サイン盗み”の闇

インチキがどうしても許せなかった理由

 ‘70年代はサイン盗みが横行していた。プロ野球界では公然の秘密とされている。別に暴露をしているつもりではない。言ってしまえば、’70年代までのプロ野球はどこかプロレス的興業要素を含み、チームプレーよりも個人プレーの応酬がファンを沸かせ、どこか見世物的な野球をやっていた節がある。そのため、なんでもござれといった風潮が流れていたのも否めない。  広岡の信条は、やるべきことを正しくやること。だから野球に対しても心血を注いで取り組んだ。プロ野球の黎明期から繁栄期にかけて現役だった広岡は、プロ野球人気を高めるためにはファンに素晴らしいプレーを魅せ続けなければと信じてやってきた。  だからこそ、広岡はインチキが許せなかった。姑息にサインを盗んで成績を上げる所業は、野球に対してもファンに対しても愚弄している。言語道断だ。卑怯な真似をする者は断固して許さない。広岡にとって、卑劣な行為に手を染めた者は穢けれた人間として絶対に認めない。広岡が生きていく上での決め事であり、それは今も昔も変わらない。<取材・文/松永多佳倫>
1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。

92歳、広岡達朗の正体92歳、広岡達朗の正体

嫌われた“球界の最長老”が遺したかったものとは――。


確執と信念 スジを通した男たち確執と信念 スジを通した男たち

昭和のプロ野球界を彩った男たちの“信念”と“生き様”を追った渾身の1冊

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