老後の仕事選びに「シルバー人材センターが頼りにならない」理由
人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。シニア専門転職支援会社「シニアジョブ」代表の中島康恵氏が、シニア転職現場のリアルを紹介する。
今回はシルバー人材センターについて解説してみよう。定年後の就職先探しにシルバー人材センターをあてにする人も多いが、「ひとまずシルバー人材センターに足を運べば安心だろう」と考えている人がいるとしたら、注意を促したい。その理由や、シルバー人材センター利用に向いている人、向いていない人の違いを解説する。
まず、シルバー人材とはそもそもどんなところとサービスなのかを整理しよう。シルバー人材センターは民間サービスではなく公共サービスで、営利法人(株式会社)ではない。多くは「社団法人」で、一部に「財団法人」もあるが、その前に「公益」とつく、公益性の認定を受けた公益法人だ。
つまり、シルバー人材センターは、公共の利益のためにシルバー人材を扱っているのだが、国や都道府県、市区町村の運営ではない。形式としては、地域の高齢者自身が「自主的に」シルバー人材センターを運営しており、国や都道府県が援助をしている、という構図になっている。
そのため、シルバー人材センターのサービスを受けるにはその地域のシルバー人材センターの「会員になる」という形を取っている。会員が互助的に仕事の斡旋をしており、シルバー人材センターそのものの運営も会員のシニアの中から選出することが多い。
ただし、概ね市区町村単位で設けられているシルバー人材センターは、それぞれ別法人で基本的には地域のセンターがそれぞれ独立した運営を行なっている。そのため、センターごとに状況が異なる場合もある。この後の説明もセンターによっては異なる点はご留意いただきたい。
シルバー人材センターが仕事の斡旋を行うのは、原則として「60歳以上」となっている。最近では、企業に65歳までの雇用継続が義務付けられているが、シルバー人材センターの利用は一応60歳からできる。ただし、これもまたセンターによって異なる可能性は否定できず、仕事ごとに年齢の上限・下限が決められている場合もあるので、確実に60歳以上から利用できるとは限らない。
また、仕事の斡旋の仕方が、ハローワークや人材紹介のエージェントサービス(職業紹介)と違うことにも注意が必要だ。ハローワークや人材紹介は「就職先」を紹介してくれるサービスで、選考を勝ち抜けば求人企業に就職できる。しかし、シルバー人材センターの場合、基本的には「請負」または「委任」の形の仕事を斡旋しているので、身分の保証がある社員として長期的に働けるわけではない。
一部には職業紹介や人材派遣の機能を持ったセンターもあり、社員として就職や派遣社員としての勤務ができるケースもあるが、多くは「請負」「委任」の形態で個人事業主として働くことになる。福利厚生、収入、安定などの面では注意したい。
そもそもシルバー人材センターって何?
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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